第二十五話 とんだ勘違い

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ケンシロウが食事を済ますと、ひとりひとり(一匹一匹?)、ケンシロウに挨拶を告げて部屋から消えていきました。
まず、青空が幼稚園へ。その付き添いで、職場へ行くというマリーも一緒に出ていきました。
次に、出ていったのは中学生のアルト。それを見届けると、そよ風が職場に出かけていきました。

そして居間には、ケンシロウとリーフ、ミントの三人が残りました。

みんなを送り出すと、ミントはエプロンをかけ、「すみません、家事を済まさなければならないので」とケンシロウに断ると、「その間、おじいちゃんの相手をお願いできますか」と申し訳なさそうに言いました。

「あ、いいですけど…」
おいしい朝食をごちそうになりながら、まさか嫌だとも言えないので、ケンシロウは快く応じました。

が、二人きりになると、話題に困り、ケンシロウはそわそわするばかりでした。

長い沈黙が続いた後、ケンシロウは、「いい天気ですね」と、長く思案したわりにはありきたりな話題で話しかけ始めました。

しかし、リーフは「電気?」と、とんちんかんな返答。ケンシロウは、ホラ、はじまった、と予想どおりの展開に早くもうんざりし始めました。

「いえ、天気です」ケンシロウは嫌気を隠して、大きな声で、ゆっくりと繰り返しました。

「元気?」

「天気です」

「だから元気かい?」

もう元気でいいや、とケンシロウは開き直りました。こうなれば否定しないで、流れに任せて話を進めればいい。どっちにしたって、たいした話にはならないのだから。

「ええ、おじいちゃん元気ですね。いま、おいくつですか?」とケンシロウは訊きました。

「ワシかい?」

「はい」

「そんなことも知らんで、来とるんかい!」突然、リーフは語気を荒げました。

「えっ?」訳がわからず呆然とするケンシロウ。

「お宅、新入りかい?」なおも意味不明な質問をするリーフ。

「何の、新入り、でしょうか?」

「介護に決まっているだろう」

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「ええっ、私が? 違います!」ケンシロウは激しく手をふり、否定しました。

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第二十六話 家族の責務

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ケンシロウが介護ヘルパーでないと、ものすごい勢いで否定すると、リーフはそれに負けない勢いのある声で、「おーい、ミント。ちょっと!」と奥の台所にいるミントを呼びました。

すると、「はい」とレスポンスのよい返事が聞こえ、すぐに小走りで駆けよるスリッパの音を響かせて、ミントが現れました。

「どうされました? おじいちゃん」

「このニイチャン、介護の人じゃないの?」リーフはケンシロウを指さしながら訊きます。

「違いますよ。地球から来た、パパのお友達のケンシロウさんです。これから家族の一員として、一緒に暮らす方ですよ」

「なんだ、そうかね」

いまさっき、紹介があったばかりなのに、リーフははじめて知ったような顔つきでケンシロウを見つめます。

「でも、そういうことになれば、おじいちゃんはケンシロウさんのお世話になるのか…。よろしくお願いしなくちゃね」

お世話って、まさかオレもこのじいさんの介護をしなければならないってこと? ミントがさらりといった「お世話」という言葉に敏感に反応したケンシロウは、家族の一員になることにより課されるかもしれない重荷に強いストレスを感じました。

そんなケンシロウの胸のうちを知らないリーフは、「そうかね」と暢気にうなずくと、ケンシロウにむかって軽く頭を下げ、「よろしく頼みます」

「は、どうも…」不安でいっぱいになりながらも、それに反応してケンシロウも軽く頭を下げました。

「そういうことで、じゃ、お願いしますね。私も午後1時にはお仕事にいかなければならないので、それまでに家事を済ませないと」

ミントはそう言うと、忙しそうに台所のほうにくるりと背をむけました。

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エッ、いきなり! ミントも出かけてしまうとなれば、リーフの面倒をみるのはオレしかいないじゃないか…。ケンシロウはひどく動揺して、「ちょっと、待って!」と大慌てでミントを呼び止めました。

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第二十七話 初めての実習

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ケンシロウは、いきなりリーフの介護を任されても困ると思い、大慌てでミントを呼び止めました。

「どうされました?」

振り返ったミントを見て、ケンシロウが口を開こうとすると、

「シッコ」

リーフに先を越されてしまいました。

「ああ、それは大変」ミントは急いでリーフの車椅子のハンドルをにぎると、ケンシロウに礼を言いました。「よく気がついてくれましたね。ありがとう」

「あ、いえ…」

そんなつもりじゃなかったのにと戸惑いながら、ケンシロウは後頭部をカキカキはにかんだ笑顔を浮かべました。

「アナタ、介助の才能あるかもね」ミントはケンシロウにウインクを送ると、「じゃ、ついてきて。おトイレ介助のやり方教えるから」と言って、颯爽と車椅子を押しました。

「あ、はい!」

ミントの魅力的なウィンクにノックアウトされたケンシロウは、憧れの先輩ナースから指導をうける新人ナースのように、喜びと緊張がまざった初々しい面持ちで、いそいそとその後についていきました。

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トイレにつくと、ミントはリーフの右手を自分の肩にのせ、よいしょ、とかけ声をかけてリーフを立たせました。
それからリーフを便座に座らせると、「じゃ、おとうさん、終わったら声をかけてくださいね」と言って、ドアを閉めました。

ふたりが声をころしてリーフの合図を待っていると、しばらくして「やった」と元気な声が聞こえてきました。

「失礼します」ミントはドアをあけ、リーフにたずねます。「たくさんでましたか?」

「でた」

「そう、それはよかったですね」

「でも、ちょっとこぼした」

床を見ると、小便の小さな湖ができていました。

「じゃ、お掃除しますね」

ミントは怒りもせず、リーフを便座から車椅子に移すと、慣れた手つきでトイレットペーパーをクルクルと引き出し、適度な長さで切り、それを折りたたみました。そしてそれを布巾がわりにして床を拭くと、便と一緒に流しました。

流れるようなミントの一連の動作を感心しながら見ていると、ミントはケンシロウに「こんな感じでお願いしますね」と言葉をかけました。

「えっ? あっ、はい…」

見とれていましたが、指導を受けていたことを思い出し、ケンシロウは姿勢を正します。

「じゃ、戻りますか」

ミントは額ににじんだ汗を色っぽく右手の甲でぬぐい、車椅子を前進させました。

居間に戻るとミントは「さ、早く家事を済まさなくちゃ」と言って、ケンシロウとリーフを残し台所に戻っていきました。

そのとたんです。
リーフはケンシロウの肩をツンツンと突き、「んこ」と言いました。

「えっ?」意味がわからずケンシロウが聞き返すと、

「んこ」

と大きな声で答えました。

『んこ』ってまさか、『うんこ』のこと? ケンシロウは早くも訪れた試練に顔を青くしました。

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★あらすじ★

第二十八話 オーマイガー

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リーフの「んこ」にたじろいだケンシロウは、ミントに助けを求めようと声をあげかけましたが、ふと思うことがあり、やめました。
その思いとは、ひとつはミントの期待を裏切るのが嫌だったこと。
それにいちいちミントの手を煩わせては、仕事に出かける時間を遅らせてしまうことになると思ったのでした。

それにしても、「んこ」じゃねえよ。そんなの、さっき小便したときに一緒にするのが普通だろ。ケンシロウは、平気で人に迷惑をかけるリーフにいらだちました。
しかし、ここで漏らされては大惨事になると思い、ケンシロウはリーフの車椅子のハンドルをにぎると、大急ぎでトイレに逆戻りしました。

トイレの前に立つと、ケンシロウは不安をふりはらうように深呼吸をしました。
よし、やってやろうじゃないか。出すものは違っても、やることはそんなに違わないだろう。
ケンシロウは意を決してトイレのドアをあけると、ミントがやったのと同じようにリーフの右腕を自分の肩にのせ、リーフを立ち上がらせようとしました。

「違う!」いきなりリーフは声を荒げました。

「えっ?」戸惑うケンシロウ。

持ちあげ方が間違ったのかと思い、ケンシロウはリーフを車椅子にもどすと、今度は後ろに回り、リーフの両脇に手を入れる持ちあげ方に変えてみました。

「ち・が・う」今度は言葉をくぎるような言い方に変えて、リーフは否定してきました。

「これもだめなの…」
ケンシロウは混乱し、今度は前からリーフの両脇に手を入れて持ちあげる方法に挑戦。しかしそれも否定され、ケンシロウは途方に暮れました。
こんな苦労、自分の親であってもできるものではないな、とケンシロウは思いました。なのに、なんでそよ風ファミリーはリーフの介護に少しも疲れた顔を見せることはないのだろう? 愛があるから? 

「じゃ、どうすればいいの?」ケンシロウはリーフの前に座り込んで、リーフを見上げながら訊きます。

すると、リーフは隣のドアを指さし、「あっち」と言いました。

「あっち、って…」ケンシロウは首を傾げました。
階ごとにトイレを設置するのなら話はわかりますが、隣にトイレを置くのは無駄以外の何ものでもないと思ったからです。
また、ボケておかしなことを口走っているんじゃないのか…。ケンシロウはリーフを疑いましたが、もしかしたら、大便で汚されるのを嫌ってリーフ用に別のトイレを設けているのかもしれません。それならば理解できると思い、ケンシロウはリーフに従い隣のドアをあけました。

見れば、そこには何の変哲もない洋式トイレが鎮座していました。ただ、前のトイレと比べて、こちらのほうが少し部屋が広いようです。

ケンシロウが室内を見回し、その他の相違点を探していると、「早く、もれちゃう」リーフが足をバタバタさせ、せかしました。

「あっ、すみません」

ケンシロウは慌てて、マニュアル通りにリーフを車椅子から便座に移します。

その時、ケンシロウは、うっかり尻で壁につけられたボタンを押してしまいました。
すると、ウィーンと電気音がして、便座裏の床につけられたフタが開きました。

なんだ! なんだ! 動揺してケンシロウが成り行きを傍観していると、出現した溝のなかにリーフの垂れ流す「んこ」が悪臭を放って流れていくのが見えます。

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「オーマイガー!」

ケンシロウは髪の毛をそそけ立たせ、絶叫しました。

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★あらすじ★


第二十九話 「んこ」の力

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「どうされました?」ケンシロウの絶叫を聞きつけ、ミントが慌てて駆けよってきました。

「いや、あの、これ、なんか、急に開いて、パカッと、それで、こんなことになってしまって…」
自分が原因でトラブルが発生したことを隠したいがために、ケンシロウはあたふたと生煮えの言い訳をしました。

しかし、ミントは即座に原因を見抜き、「あらま大変。誤ってボタンを押してしまったのね」と言うと、ケンシロウのお尻の後ろのボタンを一回右に回してから再度押しました。
するとフタがしまり、「んこ」が流れる溝は見えなくなりました。
それから窓を全開にし、続いて換気扇のスイッチをオンにして、部屋にこもった悪臭を消しました。

「これでよし」ミントは、一件落着というようにパンパンと手をはたきました。

「どうもすみません。ちょっとパニックになってしまって」ケンシロウはペコリと頭を下げました。

「いいのよ。気にしないで」ミントはナイススマイルをケンシロウに送ります。

「でも、なんでフタがついているんですか?」

「ああ、うんちが溝につまったときに困るでしょ。フタがないと、掻き出せないから。このトイレでは水をつかえないから、コンベアでうんちを流しているんだけど、電気系統のトラブルなんかがあると、つまっちゃうことがあるのよ」

「えっ、水が使えないっていうことは…」ケンシロウはリーフが「シッコ」と「んこ」を同時にしなかった理由がだんだんわかりはじめてきました。

「そう、ここでは、おしっこはできないわ」ミントが先回りして答えてくれました。

「そうなんですか」リーフがボケて面倒をかけていたわけではないことを知り、ケンシロウはリーフに申し訳なく思いました。と、同時に、自分には「シッコ」と「んこ」を別々にする芸当ができるか心配になりました。

「でも、どうしてここでは、大便しかしてはいけないんですか?」

「うんちを燃料で使うからよ。乾いていないと、よく燃えないから」とミントは答え、全開にした窓の外を指さすと、「トイレの外の地中にうんちをためる槽が埋まっているの。そこにトイレのうんちを流してためるのよ」

「へぇ~」
ケンシロウは窓に近づき、槽が埋まっているとされる真下の地面に目をやりました。
すると、そこにも鉄板の大きなフタがあるのが見えました。
そういえば、動物の糞を燃料にするって話、どこかで聞いたことがある。なるほど、バイオ燃料というわけか。

「うんちは畑の肥やしとしても使うのよ」ケンシロウの背後からミントが言いました。

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「あ、それ、じいちゃんから聞いたことがあります。昔の人は、肥溜めってやつに糞尿をためて、肥料をつくっていたって」
ケンシロウがくるりと振り返ると、ミントの顔が唇と唇が触れあわんばかりの距離にあって、ケンシロウはドキンとしました。
そうか、こんな美人の「んこ」も畑の肥料に使うのか。どうりであの野菜、うまいわけだ。

「ケンシロウさんの星でも、同じことするのね。なんか不思議」ミントは魅惑的な微笑を残して身を引くと、リーフに声をかけました。「おとうさん、もう終わりましたか?」

「ああ、いっぱいでた」リーフは誇らしげに言いました。「これでおいしい野菜がいっぱいつくれるのう」

そうか、こいつの「んこ」も肥料になるのを忘れていた! うぷっ。ケンシロウは腹にたまった朝食の野菜を、思わずはき出しそうになってしまいました。

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★あらすじ★

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プロフィール

マウントエレファント

Author:マウントエレファント
アルパカとバラとスプリング、つまり春(おまえはルー大柴か)を愛するナイスミドル?なサラリーマンです。でも同僚には、そんな趣味、ばらしません。キモイっていわれますから。残念!(古っ!)

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