第三十一話 うらやましい労働

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「おかえり」ケンシロウは、ミントと仲むつまじく会話をするそよ風に話しかけました。「今日は午後有給かい?」

「午後有給? 何ですか、それ?」そよ風は首を傾げます。

「えっ、そういう制度、アルパカ星では無いの?」それじゃまるでブラック企業だ! ケンシロウは、そんな劣悪な労働環境で働かされているそよ風を不憫に思いながら、午後有給の説明をしました。「午後の仕事を休んでも、給料がでるってことだけど」

「なんだか、よくわからないですが、そういうのとは違うと思います。別に午後お休みをもらっているわけではないんで」

「じゃ、今日は半日勤務なの?」

「いえ、いつもこんな感じですけど」

「えっ…」オマエはフリーターか! 一家の主がそんな稼ぎで、この大家族をどうやって養えているのだろう? ケンシロウは聞き返しました。「いつもって、いつも4時間程度しか働かないってこと?」

「そうですが」そよ風は平然と答えます。

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「じゃ、よほどいいところに勤めているんだ。半日勤務でも、フルタイムと変わらない給料がでるような」

「いや、普通ですよ、普通」そよ風はさらりと答えました。謙遜しているようにはみえません。「それに半日勤務がフルタイムなんで、給料の比較なんてできません」

「そんなことはないだろう」ケンシロウは、そよ風をリーフと変わらないくらい理解度のないヤツだと、いら立ちました。「8時間勤務の人と比較すればいいんだから」

「えっ」そよ風は驚いたように目を丸くします。「そんな人いませんよ」

「嘘だろ…」

「地球では、そんなに労働時間が長いんですか?」

「あ、あぁ…」ケンシロウの脳裏に、長時間労働で疲れ果てていたサラリーマン生活の記憶が再生されました。「8時間勤務どころか、毎日残業でフツーに12時間ぐらい働いていたよ。休みもろくにとれずにね」

「それじゃ、いくらも他のことできないじゃないですか!」そよ風は驚きの声をあげ、理解不能というように首を振りました。「そんな無茶な働き方をしていたら、何のために生きているのかわからなくなるし、仕事だって嫌いになってしまいそう」

「いや、実際、そうだったよ…」ケンシロウは深くうなずきました。

そよ風に言われるまでもなく、ケンシロウもあんな働き方は間違っていると思っていました。

しかし、その本音を会社で吐けば、嫌なら会社を辞めればいいと言われるのがオチだし、そんなことを考えるのは自分が弱いせいではないかとも思い、自分の考えに自信がもてませんでした。

ところが、アルパカ星では、ケンシロウの考えのほうが正常のようです。
ケンシロウは、アルパカ星に親近感を持ちはじめました。

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★あらすじ★

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第三十二話 介護の引き継ぎ

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ケンシロウがそよ風とそんな会話をしていると、マリーも仕事から帰ってきました。

「おーい、昼飯はまだか?」

居間のほうからランチを待ちきれないリーフの声がします。

「は~い。すぐできますよ。お待ちください」トウモロコシを茹でているミントが返事をします。それからケンシロウらのほうを向いて、「じゃ、みんなで協力して、早くお昼ご飯をつくっちゃいましょう」と言いました。

「あっ、そうですね。すみません」
そよ風との会話で手が留守になっていたケンシロウは、中断していた野菜のカットを再開しました。

そうして大急ぎでつくったランチをテーブルに並べ、みんなが席につくやいなや、そよ風が話し始めました。

「早速で悪いんだけど、時間が無いから打ち合わせをしよう。もちろん、食べながらでいいんだけど」

「はい」ミントとマリーは野菜を頬張りながら頷きます。

「では、まずボクの予定から」とそよ風は言いました。「ボクは午後4時までなら、お父さんの面倒を看られる。それからは勉強会に行かなければならない。勉強会は午後7時には終わるから、家に帰ってくるのは7時半前になると思う」

「じゃ、4時から誰がお父さんの面倒を看られるかということになるね」とマリーが言いました。「それならば、私が看るよ。午後は畑に行く予定だから、4時までに戻ることにする。それからパパとバトンタッチすればいいんだね」

「はい。お母さん。それでお願いします」

「ついでに夕飯の準備もしておくよ」

「アラ、そうしていただければ、有り難いわ」ミントが喜びの声をあげました。「ワタシ、午後5時には仕事が終わるんですけど、その後、市の会議が入っていて、午後7時ぐらいまでかかってしまいそうなの」

「じゃ、みんながそろうのは、午後7時半ぐらいになってしまいそうだね」マリーは目を細めて時計を見つめながら言いました。「それまでに夕飯を食べられるようにしておくよ」

ケンシロウは、いきなり始まったランチ・ミーティングを傍観しながら、半日労働でうらやましがっていたけど、みんなけっこう忙しいんだと思いました。

「じゃ、最後にワシの予定を述べる」リーフはトウモロコシをポロポロ床にこぼしながら、威厳に満ちた口調で言いました。「ワシは3時まで昼寝をして、3時のおやつを食べた後、7時半までまた寝る」

「ありがとうございます」そよ風は笑顔で答えます。「そうしていただければ、勉強会の予習と資料づくりができます」

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★あらすじ★

第三十三話 明るい介護の秘密

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そういうことか!

そよ風ファミリーのランチ・ミーティングに耳を傾けていたケンシロウは、彼らが大変なリーフの介護に押し潰されないで、明るく暮らせていられる秘密に気がつきました。

それぞれ違う時間に働くように予定を組めば、介護のバトンタッチがうまくつながれていくってことか。
それに半日労働で、短時間の介護で済むとなれば、それぞれの負担も減らせる。

さらに、一家の主が半日労働で、どうやって生活ができているのかという疑問も解けました。

それぞれが半日労働でも、全員の労働時間を足せばフルタイム以上の労働時間になり、収入面の問題も解決されるってわけか。
なるほど…。

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妻を介護の犠牲にし、一家の主である夫は妻の愚痴と激務に耐えて火の車の家計を支えるという、悲壮感に満ちた母国のそれとは違う、そよ風ファミリーの知恵にケンシロウは感心しました。

「で、ケンシロウの午後の予定はどうなるんじゃ?」ケンシロウが他人事のように、ランチ・ミーティングを眺めていると、いきなりリーフが話題をケンシロウに向けてきました。

「あっ、そうですね」そよ風は、初めてケンシロウの存在に気がついたように声をあげました。「じゃ、また午後も一緒に介護の実習をしますか?」

「いや、それだけは」オレも半日介護で済ましてくれ! ケンシロウは動揺して、椅子が倒れそうなくらい背中をのけぞらせて拒絶しました。「午後は、ちょっと気分転換に、違う実習をさせてください!」

「そうですか…」そよ風は腕を組んで考え込みます。「でも、他の実習って、何かあるかなぁ~」

「それならば、一緒に畑に行くかね?」マリーが提案をしました。

「ぜひ、ご同行させてください!」農作業などやったことがないケンシロウでしたが、訳のわからないことを言うリーフにつきあうよりも、何の言葉も返さない野菜につきあうほうが、ずっとマシだと思い、身を乗り出して懇願しました。

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★あらすじ★

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マウントエレファント

Author:マウントエレファント
アルパカとバラとスプリング、つまり春(おまえはルー大柴か)を愛するナイスミドル?なサラリーマンです。でも同僚には、そんな趣味、ばらしません。キモイっていわれますから。残念!(古っ!)

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