第五十二話 巨大壁の用途

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「ひぁぁ~!」
ケンシロウは3、40メートルの高所に連なる巨大壁を見て、いきなり背後から大声を浴びせられた時のように肝を冷やしました。

「ナニ突然大きな声を出して?」
ケンシロウの悲鳴に、飛びあがるマリー。

「いや、まさかアレが壁だとは思わなかったもので」
ローズに心を奪われ漫然と歩いていたケンシロウは、行く手をふさぐ住宅と同色のカステラ色の巨大壁を、それも住宅だと思い込んでいたのでした。

「ナニそんなに珍しいものなの?」

「ええ、地球にはあんなものありません」
荒れた呼吸を整えながら、ケンシロウは答えます。

「アラそう。星によって違うことも多いのね」

「でも、何のためにあんなに高い外壁があるんですか?」

「もちろん、街を守るためよ」

「街を守るため…」
ケンシロウは、ふいに地球にいた頃夢中で読んだ漫画『進撃の巨人』を思い浮かべました。
それは、その漫画に登場する街にも、巨人から住民を守るために、その周囲に高い外壁が築かれてあったからです。
もしかして、あの漫画と同様に、あの巨大壁も巨人から街を守るために…。
そう思うと、あまりの恐怖でケンシロウの持つ物差しのように頼りなげな護衛棒は、ブルブルと震えだしたのでした。

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第五十三話 巨大壁の向こう

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「ナニ、具合でも悪いの? 急に震えだして」
マリーは心配そうに、青ざめたケンシロウの顔を覗き込みます。

「街を守るためって…」ケンシロウは、震える口の奥から声を絞りだします。「巨人から街を守るためですか?」

「は?」口をポカンとあけるマリー。それからジワジワとおかしさがこみあげてきたらしく、プッとふきだしました。「ヤダ、そんなわけないじゃないの」

「だ、だったら、何のためにあんな高い外壁があるんですか?」
笑われたことにムッとしたケンシロウは、食ってかかるように尋ねます。

「もちろん、防災のためよ」
マリーはそう答えると、外壁のほうに向かって歩き始めました。

ケンシロウはその後をついて行きながら聞き返します。「防災?」

「そうよ。水害や風害などから街を守るために、街の周囲を外壁で囲っているのよ」

つまり防潮堤のようなものなのか…。
ケンシロウは、目前に屹立する外壁を見上げます。
でも、これほど高い防潮堤が必要になるということは、外壁の向こうは余程荒い波が打ち寄せる海がひろがっているんだな。
ケンシロウは思い浮かべた喩えを口に出しました。「つまりこの街は、海に浮かぶ要塞みたいになっているってわけですね」

しかしマリーはピンとこなかったらしく、「要塞?」と聞き返します。

「だって、壁の向こうは海なんでしょ?」

「違うわ。海なんかじゃないわよ」
マリーはそう否定すると、手慣れた操作で外壁に取り付けられた扉のハンドルを回し、ゆっくりと重そうな扉を開きました。

「あっ!」
予想もしなかった光景にケンシロウは驚きの声をあげました。
想像していた海ははるか遠くに霞んで見え、その手前には広大な農園がひろがっていたのでした。

第五十三話+のコピー_convert_20131222083853

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第五十四話 明かされた巨大壁の謎

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 外壁の向こうに見えた光景は、ケンシロウが予想していたのに反して、海は遙か遠くに霞んで見え、その手前には防風林となる松林があり、さらにその手前には果樹園、水田、畑が広がっていたのでありました。
そして、それぞれの農園では、大勢のアルパカ星人が働いているのが見えたのです。

広大な農園に圧倒されているケンシロウに、「どう、壁の外は海じゃないでしょ」とマリーは尋ねます。

「ええ」とケンシロウは頷きましたが、すぐに思い浮かんだ疑問を投げかけます。「でも、これほど海が離れているのなら、こんなに高い外壁をつくる必要はないんじゃないですか?」
地球にいた頃、ダメ社員であったケンシロウですら、どう考えてもこの公共事業は費用対効果に優れているとは思えなかったからです。

「ヤダ!」マリーは笑いながら、外壁を見上げるケンシロウの背中をはたきました。「この壁すべてが防潮堤としてつくられたわけじゃないのよ」

「えっ。そうなんですか?」

「当然でしょ」マリーは、外壁の下から5メートルくらいの高さを指さしました。「防災用の壁としてつくられたのは、ホラ、あのあたりまで」

「はぁ…」
ケンシロウはサングラスをずらして、裸眼でマリーが指さす方向を見ます。
外壁の中腹以上は窓ガラスがはってありますが、防災用の壁というあたりは何もついていない無地の壁です。防潮堤なので、カステラ色の壁の中身はコンクリートで固められているのでしょう。

「で」とマリーは続けます。「その上は食糧貯蔵ゾーンね。そこに、この農園でとれたものを貯蔵しておくのよ」

見ると、そこも無地の壁になっています。貯蔵庫というので、中は冷蔵庫のようになっているのでしょうか。ならば、窓ガラスがついていないのも、より冷蔵機能を高めるためなのでしょう。
「なるほど」とケンシロウは感心しましたが、畑のすぐ近くに貯蔵庫があるという点についても、実に効率的だと思いました。

「そして、ホラ」マリーの人差し指は、ようやく窓ガラスのついているカ所に移動しました。「その上は、スクールゾーンよ。小学生以上の子どもたちが、あそこで勉強しているの」

「というと、アルトも」
そよ風の長女アルトのキュートな笑顔を思い浮かべてケンシロウは尋ねます。

「もちろん」

「じゃ、その上は何ですか?」
興味を覚えたケンシロウは、マリーより先に、スクールゾーンの上の窓を指さします。

「ああ、アソコは医療ゾーンよ。たまに、おじいちゃんを連れて行くわ」

「そうなんだ」
リーフの痴呆の治療はアソコでやっているのかと思いながら、高い窓を見上げるケンシロウ。

マリーはさらにガイドを進めます。「それから、その上は宿泊ゾーンね」

「宿泊って、ホテルみたいなもんですか?」

「まぁ、そんなもんかしらね」とマリー。そしてさらに高い窓を指さし、「で、その上は商業ゾーンよ」

「商業ゾーン?」

「そう。そこでは、食料品とか、日用品とか、いろいろ売っているわ。ウチもよく利用するのよ」

「へぇ~」

「で、一番上の窓のなかにはね、モノレールが走っているのよ。アレを使えば、街を一周できるわ」

「そういうわけか…」
ケンシロウはようやく、防潮堤としては過剰すぎる外壁の謎が解け、深くうなずきました。

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第五十五話 外壁の効果

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「ところで」とケンシロウは尋ねます。「この外壁、実際に役立ったことあるんですか?」

「もちろん」と笑顔でマリーは答えます。「買い物に行くにも、病院に行くにも、この外壁があるお陰で、みんなとても助かっているわ」

「いやいや、そうでなくって」とケンシロウは顔の前で激しく手を振ってツッコミを入れます。「災害に見舞われた時ですよ」

「ああ、災害の時ね」マリーは勘違いの恥ずかしさを隠すようにコホンとひとつ咳払いをして、「それは、もちろん何度もあるわよ。例えば…そう、去年の台風の時も、助けられたわ」

「へぇ〜、そんな遠くない昔にも、そういうことあったんですか」

「ええ」と頷いて、マリーは外壁に向かって感謝するように手を合わせます。

「で、それは、ひどい台風だったんですか?」
 
「けっこう、すごかったわ」マリーは手を下ろすと、遠い目をして語り始めました。「あの時は、ワタシはちょうどこの畑で農作業をしていてね。急に空が暗くなったと思ったら、いきなりものすごい音をたててカミナリが鳴り始めたわ。それから、じきに強い風とともに激しい雨が降り始めたのよ」

「それで」

「もちろん、農園で働いていたみんなと一緒に大慌てで、外壁の中に逃げ込んだわ」

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「それでみんな無事だったんですか?」

「お陰様で、みんな身体が濡れたくらいで済んだわ」再び外壁に向かって手を合わせて感謝するマリー。「高い外壁が台風を跳ね除けてくれたお陰で、街も無事だったし」

「でも、農作物はどうだったんですか?」ケンシロウは台風の傷跡がどこにもみられない広大な農園を眺め渡しながら尋ねます。「モロに強風を受けたわけだから、相当な被害が出たんじゃないですか?」

「ええ、けっこうやられたわ」マリーは悲しそうに目を伏せます。「でも…」

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第五十六話 脅威の復興力

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「でも…」
昨年の台風による農作物の被害の程度をケンシロウに尋ねられると、マリーはウッと唸り、声を詰まらせました。

「でも、何ですか?」
ケンシロウは、悔しそうに口端を噛むマリーの顔を覗き込みます。

すると、マリーは、手前の畑に向けてクイッとアゴを突き出し、「ワタシが育てたこの畑の野菜は全滅だったけど、被害にあわずに済んだ農園もあったわ」と答えました。

「それは、どの農園ですか?」

マリーは外壁の方に身体を向けると、大きく両手を広げて、前方に手を煽りました。
「この外壁の真裏の農園よ」

「ということは」と言って、ケンシロウはそよ風家の畑の方に顔を向けます。「つまり風はコチラから吹いてきたということですか?」

「そういうこと…」マリーは深い溜息をついて頷きます。「ウチの耕す畑は、モロに強風を受けちゃったからダメだったけど、外壁のムコウの農園は、この高い外壁が強風をブロックしてくれたから助かったってわけ。ま、そういうことも期待して設計された外壁の威力が実証されたことを、喜ばなければいけないんだろうけどね」

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「それは、大損害でしたね」
ケンシロウは、地球で農業をやっていた親戚のことを思い出して同情を寄せました。
その親戚も、台風で畑をやられ、大損害を被ったのでした。
しかし、高齢で資金もなかったので、立ち直る余力もなく、農業を諦めざるをえなくなってしまったのです。
老夫婦で暮らしていたその親戚に比べ、マリーは息子夫婦と暮らしているので、そこまで追い詰められなくって済んだのでしょうが、ここまで復興するには、かなりの労力と資金を注いだに違いありません。

しかしマリーはさらりと、「それほどでも、なかったけどね」と答えました。「確かに、ダメになった作物を片付けて、一から作付けをするのは大変だったけど、そんなにお金を使わずに済んだから、すぐに立ち直れたわよ」

「えっ?」
そよ風家の驚異的な復興力の源がわからないケンシロウは、戸惑いの声をあげました。

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★あらすじ★

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マウントエレファント

Author:マウントエレファント
アルパカとバラとスプリング、つまり春(おまえはルー大柴か)を愛するナイスミドル?なサラリーマンです。でも同僚には、そんな趣味、ばらしません。キモイっていわれますから。残念!(古っ!)

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