第三十四話 マリーの家族に乾杯

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「じゃ、畑仕事にいきましょうかね」
ランチの後片付けが終わると、マリーはケンシロウに声をかけました。

「は、はい…」
その隣で、指示に従い食器を拭いていたケンシロウは気のない返事をしました。
リーフの介護をするのが嫌で、畑仕事に行くことを選んだケンシロウでしたが、後で考えてみると、外に出れば、他のアルパカ星に出会わざるをえなくなることに気づき、それに恐怖心を抱いていたのでした。

「後はボクがやっておきますから、ケンシロウさん行ってください」臆病風に吹かれているケンシロウの背中を押すように、そよ風が言いました。「あっ、ミントもいいよ。仕事遅れちゃうから」

「あら、そう。じゃ、お願いします」ミントはエプロンを脱ぎながら、気持ちも切り替えるように言いました。「それでは、午後はお仕事に精を出すとしますか」

「そうそう、元気で働けるってのは幸せなことだよ」マリーは相づちを打ちます。「世間様のためにも、家族のためにもなるからね。おまけに身体のためにもなる。一石三鳥だよ」

そういう会話を続けられれば、居候の身分であるケンシロウは、畑仕事に行くのが嫌だとは言えません。
重い気持ちを引きずりながら、台所を出て行くミントとマリーの後に続きます。

「では、おじいちゃん行ってきますね」ミントは居間にいるリーフに声をかけます。

「ああ、行っておいで」とリーフ。

「おいしい野菜つくってくるからね」マリーも出発の挨拶。

「うん、頼むよ」

「ボクも行ってきます」沈んだ口調で、ケンシロウも続きます。

「行くって、便所かい?」とリーフ。「じゃ、ワシもお願いしようかの」

「違います、違います。行くのは便所でなく、畑です!」
またリーフのトイレ介助をさせられたらかなわないと、ケンシロウは逃げるように居間のドアを閉め、前をゆくふたりを追いぬく勢いで玄関に向かいました。

「おや、やる気満々だね」マリーは急に活発になったケンシロウを見て、うれしそうに言いました。「これは今日の畑仕事はかどりそうだわ」

「よかったですね、いい助っ人ができて」とミント。「おじいちゃんのお世話もしてくれるし、いい人が家族の一員になってくれたわ」

誤解の種がどんどん大きくなって、ますます気が重くなるケンシロウ。
これからどんな出会いが待っているか、ビクビクしているこっちの気持ちも知らないで…。となりで目尻を下げて笑う鶴瓶顔のマリーが憎たらしくなってきました。こんなのと外を歩くなんて、まるで『鶴瓶の家族に乾杯』じゃん!

そう思いながら、その番組さながら先頭に立って玄関の外にでる鶴瓶、いやマリーに導かれるように野外に出ると、さっそく、二匹のアルパカ星人がこちらに向かって飛んでくるのが見えました。

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第三十五話 吠えるケンシロウ

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「こんにちわ~」
向こうからやってきた親子と思えるアルパカ星人は、びっくりしたような表情でケンシロウを見ながら、マリーにお辞儀をしました。

「こんにちわ。ボク、今日もお父さんと一緒にお散歩? いいわね」
マリーは鶴瓶さながら、人なつっこい笑顔で、子どものアルパカ星人に声をかけます。

「うん」その子は答えましたが、関心はケンシロウにあるようです。「ねぇ、おばあちゃん。これ何?」

これって、オレのこと? ケンシロウは自分がもの扱いされたようで腹が立ち、キッと子どものアルパカ星人を睨みつけました。

「コワ~い」
子どものアルパカ星人は泣きそうな表情で、父親のアルパカ星人にすがりつきました。

「大丈夫よ。怖がらなくも」
マリーは子どもをなだめます。

「本当? 噛まない?」

「噛まないわよ。優しいんだから」

「じゃ、なでなでしても、大丈夫?」

「うん。やってごらん」

「えーっ、本当かなぁ…」
男の子は、恐る恐るケンシロウの頭に手を伸ばしてきました。

「ガォ-!」
狂犬扱いされた腹いせに、ちょっと脅かしてやろうと思い、ケンシロウはその手に噛みつくマネをしてみせました。

「きゃー! 嘘つき、全然おとなしくないじゃん」
子どもは慌てて手を引っ込め、火がついたように泣き出しました。

「ごめんね。どうしたのかしらね」
マリーは泣きじゃくる子どもの頭をなでながら謝りました。

「いやいや、気になさらないでください。どこか、怪我をしたというわけではないんですから」父親は、平謝りするマリーに優しく声をかけると、男の子の肩を引き寄せ、「ほら、もう泣くな。男の子だろ」と涙をふいてやりました。

「本当にスミマセン」
マリーは、まだ足らないというように、深々と頭を下げて謝ります。

その姿をみると、さすがにケンシロウも大人げないことをしたと反省の念にかられました。
しかし、傷つけられたプライドの回復には、まだ時間がかかりそうです。

「でも、奥さん」父親のアルパカ星人は、ケンシロウを一瞥して言いました。「変わったペットを飼っていますね」

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「オレはペットじゃない!」
生傷に塩をすり込まれるような激痛が走ったケンシロウは、さらに大きな咆哮をあげました。

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第三十六話 特ダネ

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「ペ、ペットがしゃべった!」
父親のアルパカ星人は、腰を抜かさんばかりの勢いで身体を反らせ、驚愕の声をあげました。

「だからペットじゃないっての!」
ケンシロウは噛みつくような口調で叫びました。

「そうなんですよ。ペットじゃないんです」
荒ぶる愛犬を鎮めるように、マリーはケンシロウの背中をさすりながら、慌てて仲裁に入りました。

「えっ、じゃ、何なんですか?」

「異星人なんです」

「い、異星人!」父親のアルパカ星人は、今度は逆に身を乗り出し、ケンシロウに熱い視線を注ぎました。「これは、スクープだ!」

「スクープって、あなたは?」
マリーの円満な笑顔が警戒の色に染まります。

「すいません。私はこういうものです」
父親のアルパカ星人は名刺をマリーに差し出します。

「アルパカ市民新聞…」
メガネを持ち上げると、マリーは細い目をさらに細めて、名刺の文字を読み上げます。

「そうです。新聞記者です」父親のアルパカ星人は一礼すると、これで取材依頼の手続きは終わったといった感じで、そそくさとペンとメモ帳を取り出し、質問を始めました。「で、どこの星から、彼は来たんですか?」

「ち、ち」その質問にマリーが答えかけると、

「地球です!」
お調子者のケンシロウは、ペットから取材される身分に昇格したことに気を良くし、マリーの返答を遮るように元気よく答えました。

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「ち、ちょっと待って下さい!」
マリーは、いきなり始まったインタビューの流れを堰き止めるように、強い口調で話に割って入りました。

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第三十七話 マリーの心配

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「ち、ちょっと待って下さい!」
ケンシロウが記者のインタビューに応じようとすると、マリーは猛烈な勢いで制止に入りました。

「なんでしょう?」
邪魔に入ったマリーをうるさそうな表情で見ながら、記者は尋ねました。

「取材をお受けするかどうかは、もう少し考えさせてもらえませんか?」

「どうしてですか?」

「もしアナタの取材が発端になって、他の記者さんたちや一般の方々が家に押し寄せるようなことになれば、家庭の平穏が乱されるんじゃないかと思って」

マリーの心配を聞いて、ケンシロウの脳裏に、スキャンダルを起こした芸能人宅に押し寄せるマスコミの光景が思い浮かびました。

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なるほど、そういうことになったら、困るなぁ。そよ風ファミリーにも迷惑をかけるし…。
そう考えると、浮かれていた気持ちも急にしぼみ始めました。

「でも、彼の存在を隠し通すことはできませんよ」記者は射るような鋭い視線で、マリーを見つめます。「こうして彼を外に連れ出せば、誰かの目に触れることは避けられませんからね。それとも、籠の中の鳥のように彼を家の中に閉じ込めておくつもりですか? それじゃ、本当のペットになってしまうじゃないですか」

「はぁ…」
マリーは弱気になった目を伏せます。

「でしょ」記者はニンマリと笑みを浮かべて、ケンシロウのほうに向き直ります。「じゃ、取材を再開しますか」

「でも、やっぱり…」
力を失った声になりながらも、マリーは食い下がります。

「アナタもわからない人だね」記者はうんざりとした表情をマリーに戻しました。「早く取材を受けてしまったほうが、彼もアナタたちも楽になれるんですよ」

「楽になれる?」その意味がわからないといった感じで首を捻って、マリーは尋ねます。「どうしてですか?」

「だって世間に公表すれば、彼の身元の説明が一回で済むじゃないですか。でも、取材を避けていたらどうなります? 誰かに会う度ごとに、いちいち説明しなくっちゃいけなくなるんですよ。そんなの面倒くさいじゃないですか」

「確かに、そうですけど…」

「なぁに、そんなに心配することありませんよ。注目を浴びるのも、ほんの一時ですよ。それに、アルパカ星人は、すぐに何でも受け入れてしまう高い順応性をもっていますし、誰とでもすぐに仲良くなっちゃうじゃないですか」

「そうはいっても、彼の場合はちょっと…」
ケンシロウをチラチラと見るマリーの顔からは、まだ困惑の色は消えません。

「異星人だから、話は違うというのですか?」

「ええ、まぁ…」

「では、アナタはどうだったんですか? 彼を、すぐには受け入れられませんでしたか。それとも今も-」

「そんなことはありません!」次の言葉を継がせまいという勢いで、マリーはきっぱりと言いました。「彼は、私たちの大切なファミリーです」

迷いのないその発言に心を打たれ、ケンシロウの胸に熱いものがこみ上げてきました。

「ファミリーね…」
記者も何か感じるものがあったらしく、傍らに寄り添う彼の息子に目をやると、言葉をつまらせました。
愛息が、クリクリとしたかわいらしい目で彼を見上げていたからです。
その眼差しを受けると、彼の顔つきは、ギラギラした記者のものから、温和な父親のものに変わりました。

「わかりました。待ちましょう」ようやく記者は主張を譲りました。「ただし条件があります」

「条件?」
マリーとケンシロウは同時に、不安気な声をあげました。

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★あらすじ★


第三十八話 とんだ条件

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「条件って、何でしょう?」
ゴクリと生唾を飲み込んで、マリーは尋ねます。

「ワタシ以外の取材は受けないということが、まず第一」

「それは、もちろん」マリーはホッとした表情で快諾します。「取材を受けるということで話がまとまったら、すぐにアナタに連絡しますよ。この名刺に書かれている電話番号に、電話すればいいんですね」

「そうです。ワタシにすぐ連絡してください」

「は~い、了解です」
マリーは明るい声で返事をします。これで取引は終わったと安堵しているようです。
しかしケンシロウは、記者が第一という言葉を付け足したことを聞き逃していませんでした。

「で、他にも条件があるのですか?」
ケンシロウは、恐る恐る訊きます。

「外に出るときは、変装してください」
記者は、自分の顔を人差し指でツンツンつつきながら答えました。

「えっ…」何でそういう展開になるのか、ケンシロウはまったく理解できません。「どうしてですか?」

「だって、他の記者にスクープとられちゃうじゃないですか、素のまま外出されちゃ」
コイツ鈍いなといった感じで表情を渋くし、記者は説明しました。

「確かに」ケンシロウは頷きます。しかし、さらなる難問が浮かびました。「でも、変装するったって、そういう小道具もっていませんし、何をどうすれば、この顔をアルパカ星人に変えられるのでしょう?」

「整形すれば、いいんじゃない!」
名案が浮かんだというように、マリーが提案しました。

「い、いやですよ。整形手術なんて!」仰天の声をあげたケンシロウは、鶴瓶似のマリーの顔を指さし、「そんな顔になりたくないです!」と首を激しく振りました。

「あら、失礼ね」
老いていますが、マリーも女性です。さすがにムッとした表情になりました。

「あっ、スミマセン。そんなつもりじゃ…」
ケンシロウは失言を訂正しようと、慌てて言い訳を探しました。

「まぁ、まぁ、けんかしないで」記者は仲裁に入りましたが、その顔は必死に笑いをこらえているようです。「整形手術なんて、大げさなことをしなくても、変装はできますから」

「本当ですか!」ケンシロウは胸をなで下ろしました。「で、どんな方法があるんです?」

「これです」と言って、記者はデイパックから何かを取り出しました。「ジャーン! 変装三点セット。張り込みの時、ボクがいつもつけているものですよ」

出てきたのは、アルパカ星人の耳のつくりものがついた紺のニットキャップと同色ネックウォーマー、太い眉毛のつくりものがついたサングラス、アルパカ星人の鼻と口そっくりに成形したマスクの三点です。

「これをつけて、外を歩けというのですか!」
変装三点グッツを装着したときの姿を想像すると、ケンシロウは抵抗感を覚えました。
ニットキャップのてっぺんにはヘンテコな毛が一本ついていますし、鼻の下にはチョビ髭がついていたからです。
これでは、まるで「うちのおとうさん」に変装したときの加藤茶です。

第三十八話+のコピー_convert_20131026201621


ニニニ、ニックション! 
突然、記者は大きなクシャミをしました。
「どうも失礼しました。でも、そこがポイントなんですよ」記者は鼻水をすすりながら言いました。「だって、人を和やかにする変装のほうが怪しまれないじゃないですか。それに、これ温かくていいんですよ。ボクたちアルパカ星人の毛で編んだものですから」

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プロフィール

マウントエレファント

Author:マウントエレファント
アルパカとバラとスプリング、つまり春(おまえはルー大柴か)を愛するナイスミドル?なサラリーマンです。でも同僚には、そんな趣味、ばらしません。キモイっていわれますから。残念!(古っ!)

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