第四十八話 二階から媚薬

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ガシャーン
ケンシロウの足元で激しい音をたてて割れる植木鉢。衝撃で飛び散った破片がケンシロウの脛に当たりました。

ヒ〜ッ!!
仰天のあまり大きく体をのけぞらして悲鳴をあげるケンシロウ。あと一歩、手前に出ていたら脳天に命中し、あの世に行っていたかもしれません。
おお、神よ、あなたはまだボクを見捨ててはいなかったのですね。ケンシロウは神に感謝し、思わず、天を仰いで合掌しました。

しかし、その視線の先に見えたのは、二階のベランダから心配そうに下を見おろす若くて美しいメスのアルパカ星人でした。
そのメスのアルパカ星人は、ケンシロウ目が合うと、「あっ、スミマセン。大丈夫でした?」と声をかけてきました。

「はい…全然…大丈夫…です」
一目惚れというやつでしょうか、ケンシロウの胸を激しく打っていた鼓動は、いつしか恐怖のそれからトキメキのそれへとかわっていました。

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「今、行きますから、ちょっと待っててください!」
その美女は、女子アナにしてもいいくらいの、よく通る美声でそう言うと、色とりどりの花が咲き誇るベランダから姿を消しました。

「なんだ、事故だったのね」と胸を撫で下ろすマリー。「よかったわ。狙われたわけでなくって」

「本当に…良かった…です」顔を火照らせ、うつろな目で頷くケンシロウ。「いい出会いがあって…」

「ナニソレ」と呆れるマリー。そしてケンシロウのお尻を軽く叩き、「何に喜んでいるのよ」と一喝。

「えっ、あっ、いや別に…」
喝を入れられ、我に返ったケンシロウ。心の動揺を隠すために、植木鉢の破片が当たった右の脛のあたりのホコリを払ってごまかします。

「大丈夫なの? 怪我してない?」
マリーはしゃがむと、ケンシロウのズボンの裾をめくりあげようとします。

「いや、大丈夫ですから」とケンシロウ。少し痛みはありましたが、たいした怪我は負っていないようです。

「でも、ちょっと見せてみなさいよ」
強引に裾をめくりあげるマリー。そんなことをしていると、背後でドアが開く音がしました。

彼女だ! 再び胸が高鳴るケンシロウ。

振り返ると、ケンシロウのマドンナは大急ぎで駆け寄ってきます。
マドンナはケンシロウの前に立つと、「お花のお手入れをしていたら、うっかり手を滑らせてしまって、本当にスミマセンでした!」と深々と頭を下げ謝罪しました。
その拍子に、ふわりと漂ってくるバラの香りに似た芳香。ケンシロウはうっとりし、「ハヒ〜ッ、ぜんぜん大丈夫ですから」と鼻の下を伸ばして答えました。

しかし、マドンナはケンシロウの足元に視線を落とすと、表情を曇らせます。「でも、血がちょっと出ていますよ」

ケンシロウも視線を落とすと、確かに、マリーがめくり上げたズボンの裾から露出した右の脛には、血が滲んでいるのが見えました。

「だ、大丈夫ですよ。これくらい」
いつもなら血をみると大騒ぎするくせに、ケンシロウは彼女にいいところを見せようと、強がってみせました。

「そうだよ。これくらいならツバでもつけとけば、治っちゃうよ」
マリーも同調して、横から口を挟みます。そして、右の手のひらに勢い良くツバを吐きつけると、その手をケンシロウの脛に当てようとしました。

「ち、ちょっと、やめて!」ケンシロウは絶叫すると、大慌てで膝を抱え上げます。「そんな消毒、勘弁して下さい!」

「まぁ、失礼ね」と頬を膨らますマリー。「ワタシ、変な菌なんてもっていないわよ」

「いや、それはわかっているんですが、ちゃんと消毒したほうがいいかと…」
また、マリーを怒らせてしまったと身を縮めるケンシロウ。

そんな二人やりとりを戸惑った表情で見ていたマドンナは、「じゃ、わたしが消毒しましょうか?」と小さく手をあげました。

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★あらすじ★

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第四十九話 語れない武勇伝

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若くて、見目麗しい女性からそのような優しい言葉をかけられた覚えのないケンシロウは、「よ、よろしくお願いします」とうわずった声で、遠慮無く傷口の消毒をお願いしました。

ところがです。
ケンシロウが目をつぶって美女の唾液の消毒スプレーを待っていると、「じゃ、消毒液をとりに行ってきます」と美女は立ち上がり、自宅の玄関のほうに踵を返してしまったのです。

「はぁ…」
当てが外れて、間抜けな表情で肩を落とすケンシロウ。
その後ろで、マリーは美女が家の中に消えるのを見送りながら、「いいお嬢さんだね」とつぶやきました。

「ええ、とっても」
ケンシロウもしみじみ頷きます。

「でも、最近越してきたのかね…」と首を傾げるマリー。

「はい?」

「いえねぇ、初めて見る顔だからねぇ。顔の感じも、ちょっと、アルパカ星人離れしているし」

「そうなんですか?」
どこがどうアルパカ星人離れしているのかと、ケンシロウはマリーの顔をまじまじと見つめながら、美女の面影と比較してみます。確かに、美醜の点において、天と地ほどの差があるとケンシロウは思いました。

「何よ、急にじっと見つめて」マリーは安く値付けされた顔をしかめます。「ワタシの顔に何かついている?」

「いえ、別に、何でもありません」ケンシロウは慌ててマリーから視線をそらすと、美女宅の玄関のほうに顔を向けました。
すると、グッドタイミングで、美女が玄関から出てきました。

「スミマセン、お待たせしちゃって」
消毒液と絆創膏を手に持った美女は小走りにケンシロウのもとに駆けよると、ペコリと頭を下げました。

「いえ、全然、お待たせされていません」
緊張のあまり、おかしな言葉遣いをするケンシロウ。

「そうですか」とクスリと笑う美女。それから、直立不動のケンシロウの前にしゃがむと、「じゃ、消毒しますね。ちょっとしみますけど、我慢してください」と断って、シューと傷口に消毒液を吹きつけました。

「くう~っ!」
予想以上の刺激に、思わず悲鳴をもらすケンシロウ。

「大丈夫ですか?」
美女は絆創膏を貼りながら尋ねます。

「ええ、どうってことありません」強がりを言って、男気をみせるケンシロウ。「何なら、消毒液を全部かけてもらっても、けっこうです」

四十九話+のコピー_convert_20131208072220


「まぁ、頼もしいこと」と笑顔で受け流す美女。しかし、ケンシロウが右手に持っている棒に目をやると、真顔に戻って尋ねます。「でも、何をされていたんですか? そんなものを持って」

「ああ、これですか」とケンシロウ。自慢げに棒を持ちあげて見せ、「護身用ですよ。ハハハ、いえナニ、ボディガードをやっているもんで」

「ボディガード」美女は目を丸くして、ケンシロウの後ろに立つマリーに視線を移します。「お母様の?」

「ええ、まあ。でも、母ではないんですけどね。世話になっている家の大奥様なんですよ」

「そうなんですか」感心したように美女は熱い視線をケンシロウに注ぎます。「偉いですね」

「いや、それほどでも」照れ笑いを浮かべながら、ケンシロウは気取った声で答えます。「お世話になっているんですから、当然のことです」

「でも、ボディガードをつけなくっちゃいけないくらい危険なことがあるんですか?」

「それは、もう」ケンシロウがペラペラと武勇伝を語ろうとすると、マリーはケンシロウのお尻をつねりました。「痛~っ!!」

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★あらすじ★

第五十話 喜びの展開

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「イテテッ」
マリーにつねられて痛んだ臀部を目尻に涙をためてさするケンシロウ。

「どうされました?」
美女は、ケンシロウの顔を心配げに覗き込みます。

「いやぁ、その…」ケンシロウは、マリーをおびえた目でうかがいながら答えます。「危険なことなんて、別にありません」

「それなら、ボディガードをする意味なんてないんじゃ-」と美女が言いかけます。
そこに、割って入るマリー。「それはワタシが彼に勝手に頼んだことなんだから、構わないでほしいわ」

「そ、それは、そうですよね」美女はマリーの勢いに押されて、シュンとしてしまいます。「深入りしてしまいまして、本当に申し訳ありませんでした」

ケンシロウは、身を小さくしてしおれている美女を見て、たまらない気持ちになり、「そんな…謝る必要なんてないですよ。アナタはただ、この老婆に何か危機が迫っているのではないかと、心配してくださっただけなんですから」と弁護し、ちらりとマリーに目をやって、「あなたのそのお気遣いを、悪く受け取ったほうに問題があるのです」

「あんた、ちょっと」
マリーは細い目を釣り上げて、ケンシロウの右の二の腕をつねります。

しかし、今度はケンシロウも負けていません。その痛みに耐え、ぐっと奥歯をかみしめて言い張りました。「アナタは、絶対悪くない!」

しかし、美女は深々と頭を下げて謝罪を繰り返します。「いえ、ワタシがいけないのです。ワタシがそのことを知ったところで、何のお助けもできるわけではありません。ならば、それは野次馬とおなじ愚かな行為ですものね。お婆さま。どうかお許し下さい」

「いや、そんな…」今度は、マリーが恐縮して身を縮めます。「お嬢さんが悪いなんて、全然思っていませんよ。気にしないで、くださいな」

「そうですか。ありがとうございます」美女は、心が軽くなったように晴れやかな笑顔を浮かべます。「でも、そのような大変な思いをしているときに、ワタシったら、うっかり植木鉢を落としてしまったりして。さぞ、驚かれたことでしょう。この償いは、言葉だけで済むようなものではありません」

「いえ、そんな、本当にお気になさらないで」と笑顔で断るマリー。

「そうですよ。ボクの俊敏なボディガードで、こうしてこの老婆も難を逃れたわけですから」とケンシロウも続きます。

「でも、それじゃワタシの気が済まないのです」美女はケンシロウのほうを向いて言いました。「私の名前は、ローズと言います。今は何も用意できないので、近いうちにお食事とか、なにか償わせていただきたいと思います。つきましては、ご連絡先を教えていただけませんか?」

「は、はい喜んで!」まさかの美女からの誘いに有頂天になるケンシロウ。とっさにスマホを探しますが、それは背広の内ポケットに入っていますし、たとえあったとしても、それはこの星では使えるはずもありません。「すみません。ボク、電話もっていないんです」

「そうですか」と声を落とすローズ。しかしペンを取り出し、メモ帳にサラサラと数字を走り書きすると、それを切り取り、ケンシロウに差し出します。「これワタシの電話番号です。2日後に、ここに電話してください。それまでに、プランを立てておきますので」

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「は、はい!」ケンシロウは、マスクに隠された鼻の下を思いっきり伸ばしてそれを受け取ります。「必ず連絡させていただきます!」

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★あらすじ★

第五十一話 立ちはだかる巨大壁

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美しすぎるアルパカ星人、ローズから電話番号を教えてもらい天にも昇る気分のケンシロウ。先ほどまでの重い足取りとはうってかわり、いまは羽の生えたアルパカ星人のごとく、飛ぶような軽やかな足取りでマリーの前を歩いていきます。

「ちょっと、道も知らないくせに、先に行っちゃダメって言っているでしょ」と息を切らして注意するマリー。「それに、もうちょっとゆっくり歩いてもらえないかしら。こっちが年寄りだってことを考えて頂戴」

「あっ、スミマセン」と弾んだ声で答えるケンシロウ。「でも、なんか楽しくなっちゃって、身体がこう、自然に跳ねちゃうんですよね」

「なに浮かれているんだか…」呆れ顔でため息をもらすマリー。「まさか、アンタ、あのローズっていうお嬢さんに惚れたのかい?」

「えっ、バレました!」喜びを隠せない声で驚いてみせるケンシロウ。「おかしいなぁ~、オモテに出さないように厳重に注意していたのに」

しかしマリーは「あんまり期待しないほうがいいよ」と冷めた目で忠告します。「ぬか喜びになりかねないから」

「なんで、そんなことを言うのですか?」

「だって、あんな可愛い子がだよ、彼氏がいないわけないじゃない。いや、ひょっとしたら、もう結婚しているかも」

「た、確かに…」と表情を曇らすケンシロウ。十分にありえる予想をつきつけられ、瞬く間に、奈落の底につき落とされてしまいした。

「それにだよ。たとえ、パートナーがいなくても、アンタが彼女と付き合うのは難しいんじゃないのかねぇ」

「な、なんでですか!」ケンシロウは鼻息荒く反論します。「確かに、ボクは平凡な顔立ちですよ。あんなに綺麗な女性とは釣り合わないかもしれません。でも彼女、ボクに好意をもっていてくれているみたいだし、熱意をもってアタックすれば必ず思いは通じるはずです」

「いや、釣り合う釣り合わない以前に、異星人同士が結婚できるかってことだよ」

その指摘には「うっ…」と唸ったまま、言葉を失うケンシロウ。そうか。異星人同士が夫婦になるってことは、カラスと白鳥がつがいになるようなものなのだ…。

「わかったかい?」マリーは片手でやさしくケンシロウの肩を抱き、空いたもう片方の手を高く指差します。「アンタと彼女の間には、あれと同じくらいの高い壁があるんだよ」

「ひぁぁ~!」
ケンシロウは動転のあまり、絶叫しました。
マリーが指差すほうを見上げると、そこには3、40メートルほどの高さの壁が立ちはだかっていたのです。

第五十一話+のコピー_convert_20131214205125

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★あらすじ★


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プロフィール

マウントエレファント

Author:マウントエレファント
アルパカとバラとスプリング、つまり春(おまえはルー大柴か)を愛するナイスミドル?なサラリーマンです。でも同僚には、そんな趣味、ばらしません。キモイっていわれますから。残念!(古っ!)

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