死のスライドショー

オリジナルホラー小説トーナメント・ランキング3位作品

記録的な猛暑が続いていますね。今日も寝苦しい夜になりそうです。
そこで、皆さんに涼んでもらおうと思い、コワイ話を書いてみました。
心臓の弱い方は、病院に行ってください。


あまりの寝苦しさにボクは目を覚ました。部屋の中は熱気がこもっていて蒸し風呂のようだ。額には、玉のような汗が浮かんでいる。ベッドから半身を起こすと、Tシャツが汗で背中にはりついて気持ちが悪い。

枕元の時計を確認すると、1時48分だった。エアコンのタイマーを2時間後に切れるようにセットしておいたので、冷房が切れたのは20分ほど前ということになる。

再びタイマーをセットしようかと思ったが、それはちょっと贅沢だし、身体にも良くないと思い、部屋の窓を開け、自然の冷気で熱気を入れ替えることにした。

やってみると、意外に涼しい風が入ってきて快適だ。これならはじめから窓を開けて寝れば良かったと思った。

睡眠の邪魔になるクルマやバイクの音が入ってくるので、あまり窓を開けて眠るのを好まないが、今日は不思議と静かで、家の前を流れる下水の音も川のせせらぎのようで快眠のいいBGMになってくれそうだ。

ボクは小用を済ましたあと、スポーツドリンクで喉を潤し、それからベッドに戻り熟睡にはいる態勢をとった。

目を閉じると、ちょっと寒いぐらいに手足が冷えてきた。
しかし、どうしたわけか、顔だけが直接温風を当てられたように異様に暑い。

しばらくすれば、それもおさまってくるかと我慢したが、ますます暑くなってきた。

ボクは耐えきれず起きあがると、額の汗を拭った。

時計を見ると、もう2時を回っていた。明日は結構仕事が忙しく、身体を休めないとこたえそうだ。そう考えると、もういけない。いつもの眠れなくなるパターンだ。

こんなときは無理に寝ようとしないほうが、かえって効果的だと経験から知っている。

ボクは気を紛らわすためにネットでも見ようと、枕元においてあるタブレット端末を手にとった。これはちょうど一年前、彼女がボクの誕生日にプレゼントしてくれたものだ。

「そうか、ボクも今日から24になるのか。仕事のほうも一人前になってきたし、そろそろ彼女にプロポーズして、独身生活を卒業してもいい頃だな」

そんな夢を描きながら、グーグルクロームのアイコンをタップすると、いきなりネズミの赤ん坊のような映像が映し出された。よく見ると、それは人間の胎児だった。

「なんじゃこれ、キモいなぁ」

ボクはそのサイトを閉じようとしたが、いくらやっても操作が通じない。

「なんだ、固まっちまったか」

もうこうなったら強制終了しかないと電源ボタンを押したが、これも反応しなかった。

これじゃ気分を入れかえるどころじゃない。

ならば、無線LANの電源を切ってしまえと起き上がろうとしたとき、その気味の悪い映像が急に消え、画面が真っ暗になった。

「しまった、乱暴に扱ったせいで壊れたか」

今度は電源ボタンを入れてみた。

すると、画面にもっと成長した赤ん坊の顔が浮かびあがった。

どこかで見た顔だなあと思ってピンチアウトして画像を拡大すると、それはなんとボクの赤ん坊のときの顔写真だった。画像の下には「0」という数字がある。おそらく年齢を表示しているのだろう。

「なんで、こんなものがネットに流れているんだ」

ボクは薄気味悪くなり、サイト元を探ろうとしたその瞬間、勝手にスライドショーが始まり、シャカシャカと、1年ごとボクが成長していく写真が展開されはじめた。

止めようもなくスライドされる写真はだんだん今のボクの年齢に近づき、ついに24の年齢になったとき、血だらけで白目をむいているボクの顔が映しだされて、そこで電源が落ちた。

スライドショー+のコピー_convert_20130712203054


「おい、ヘンなイタズラはやめてくれ」

ボクはタブレット端末を投げ出すと、あまりの恐怖に頭をかきむしり叫び声をあげた。

そこで目が覚めた。

驚いたことに、顔の上にタブレット端末を置いたままボクは寝ていた。電源が入ったままでなので、機体は熱をもっている。

「これじゃ、顔だけ熱いわけだ」

ボクは悪夢でよかったと安堵しながら暗い部屋を見回した。

閉めてあるはずの窓が開いていた。

アレ? じゃあれからネットを見ながら寝てしまったということか。

今度は枕元の時計を確認してみる。

時計は2時30分を指していた。

いくらもねていないじゃないか。

ボクは恐る恐るタブレット端末の電源を入れてみた。

画面は正常な状態だった。

「そうだよな。そんなことあるわけないよな」

ボクはすべてが正常な状態に戻ったような気になり、気軽に履歴を開いてみた。

すると、24回アクセスされたボクの名前の履歴記録があり、最後にここから最も近い葬儀社をアクセスした履歴が残っていた。

「うそだ!」

ボクは怖くなってタブレット端末から手を放した。タブレット端末はベッドの上でバウンドすると、反転した。

「なんじゃ、こりゃ」

不気味なことに、そのシルバーの背面には血だらけの指で触ったような痕があった。


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飛び込み台の底へ 一話

猛暑が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。
皆様に、少しでも涼んでいただこうと思いまして、ちょっと不思議でヒヤッとするショートストーリーを書いてみました


二度寝も飽きるほど、オレは日曜日の朝をベッドのうえでダラダラと過ごしている。

週に一度の貴重な休日なのだから、もっと早く起きて有意義な時間の使い方をしなければもったいないと思う。
しかし、身体がいうことをきかないのだ。

連日の炎天下での重労働で身体が鉛のように重い。

また、その不快な労働環境でいらだつ作業員たちは、毎日のようにくだらないことでいさかいを起こす。
臆病なオレは気の荒い作業員なかまの機嫌を損ねないように神経をすり減らし、そのストレスで精神もくたくたに参っているのだ。

それに遊ぶ金もない。
安い賃金で働かされているので、アパートの家賃に食費、光熱費、インターネットやスマホの通信料を払えば、あとはいくらも残らない。

遊ぶ相手もいない。
30歳近くになるが、ひとりの彼女もできない。
引っ込み思案なオレは、気になる女性がいても声がかけられないのだ。
それにこんなボンビーな生活では、みごと彼女をゲットし結婚にたどりつけたとしても、どうやって養っていかれよう。オレにはなんの取り柄もない。何かで成功し、セレブになれる可能性は0だ。
このままでは一生独身だと思うと、遊びで浪費するより、一円でも多く老後のために貯金したい。

従ってクルマを買える身分ではない。こういうことからも、余計に出不精になってしまうのだ。

今週もリフレッシュされない休日の過ごし方になるのかと、深いため息をつきながら枕元の時計を見る。

時計の針は、9時37分をさしている。
この時刻になると、夏の強い日差しがベッドに差し込み、眠ろうにも眠れない。

「じゃ、起きるとするか」

オレは重い腰をあげてベッドを離れると、洗顔などをチャチャと済まし、昨日仕事帰りにコンビニで買った菓子パンで空腹を満たした。

あとは暇つぶしに、ネットでもみようかと、狭いテーブルの上においたノートパソコンの電源を入れる。

ネットを開くと、まず最初に見るのは、ヤフーのニュースだ。節約のために、新聞をとっていないので、これだけは欠かせない。
今日は、とりたててこれといったニュースはないので早々にヤフーを閉じ、後は何をしようかと適当にネットサーフィンをしながら考えた。

「ドライブがわりに、グーグルマップでどこかに行った気になるか」

我ながらわびしい選択だと思いながらグーグルマップを開いてみる。

といって、行ってみたい場所も思い浮かばない。
前に旅行したところや昔住んでいたところに降りてみて、当時とどのくらい景色がかわっているのか確認するのが、グーグルマップの最大の楽しみ方だと思うのだが、旅行もほとんどせず、よその場所で住んだ経験のないオレにとっては、そういう楽しみは味わえない。

つくづくつまらない人生だと唇をかんだとき、欠けた右前歯の感触で、ふとある苦い記憶がよみがえってきた。

「そういえば、あの時以来、アソコにいっていないな。小学生のときからだから、ずいぶん様子もかわっているだろう。もしかしたら、アレ、もうなくなっているかもしれないな」

いま住んでいるアパートから、5キロ程度しか離れていないのに、20年近くも訪れていない、いや、近寄ろうとしないアノ場所のことが気になりだした。

その付近は、地元で最も開発が進んでいて、この10年で景観がまったく変わってしまった。となれば、アノ場所も昔のままであるはずはない。

そう思うと、現在の景色を確認してみたくて仕方なくなってくる。

「ちょっと、見てみるか…」

月に決まって二、三回みる悪夢の中で、なぜか意思に反して行かされるアノ場所に、オレは初めてグーグルマップを使って訪れてみることにした。

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飛び込み台の底へ 二話

初めての方はコチラから

グーグルマップを開くと、オレはさっそく目的地の付近にヒトをおろす。

ロースペックのパソコンなので、ストリートビューの表示にちょっともたついたが、じきに大通りに面した三階建ての某家電量販店の建物が映し出される。

この通りには、スーパーマーケットやドラックストア、ブックストア、ファミリーレストランなどが並んでいる。要するに、典型的な郊外商業地だ。

オレもたまに買い物に行くので、この風景は見慣れている。

オレが小学生の頃は、このあたりは田園地帯だった。

しかしあまりに開発が進み、今はどこにも当時の面影を忍ばせるものはない。
正直、どの道をいけばアノ場所にたどり着くのか見当がつかなくなる。

というか、あまりに遠い記憶になっているため、当時の風景のままであっても、アソコに迷わず行ける自信はない。

ひょっとしたら、アノ場所は本当は存在していなかったのではないか。そんな疑いをもってしまうほど、アノ出来事以外の記憶は薄らいでしまっている。

オレはいったん、ヒトを戻し、ビューを地図に切り替えた。
地図を拡大してアノ場所を確認してから、ヒトをおろしたほうが手っ取り早いと考えたからだ。

それが正解で、すぐにアノ場所は発見できた。

オレは、その場所にヒトをおろす。

息を呑んで映像をまっていると、いきなり民家のブロック塀が現れる。
ヒトの向きが逆だったようだ。

ヒトの向きを旋回させながら周囲の風景をみると、驚くぐらい昔と様子が変わっていない。この一帯だけ、時間が止まっているかのようだ。

そしてついに、アノ場所が映った。

「おっと、こちらも全然変わっていない」

その場所を囲む住宅も、青々とした水田も昔のままだ。
そして、あの苦い出来事がおきた市民プールも当時のまま存在してる。

オレは、あの出来事が起きた飛び込み台に視線を移す。

「まさか、そんなことが…」

道路沿いに面した青い金網のフェンスのむこうに、三メートルぐらいの高さの飛び込み台がある。
飛び込み台には一人の少年があがっていて、下では三人の少年たちがその様子をはしゃいで見守っている。

もっとよく確認してみるために、できるかぎり飛び込み台の近くまでヒトを近づけ、映像を拡大してみる。

「やっぱ、オレに似ている…」

飛び込み台の上から、今にも泣きそうな表情で下の悪ガキたちを見下ろすその少年の顔がオレの子供ころとそっくりだったのだ。

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飛び込み台の底へ 三話

初めての方はコチラから

オレとそっくりな少年の顔をみて、自分がふたたびあの中にいる錯覚にとらえられた。

あの出来事がおきたのは、小学四年生の夏休みだった。
オレはクラスの友達四人と、自転車でその市民プールに遊びに行った。

さんざん水の中でふざけあった後、いきなりガキ大将が飛び込み台を指さし、あれで度胸試しをしようと言い出した。
やろう! やろう!
オレを除いた他の二人はすぐに賛成して、そのうちの一人がジャンケンで順番を決めようと提案した。

冗談じゃない…。高所恐怖症のオレは仲間の輪から外れようと、みんなに気づかれないように静かに後退した。
しかし、「テメエ、なに逃げてんだ!」とガキ大将の一喝。
有無を言わせずオレはふたたび仲間の輪にひき戻され、強制的にジャンケンに加わらされた。

ジャンケンのルールは、勝った者から先に飛び込むというものであった。
消極的な姿勢が結果に反映されたのか、オレは一番最後に飛び込むことになった。

順番が後になればなるほど、恐怖感は高まるものである。
次々と高所からの飛び込みをクリアしていく友達を見るたびに、オレの心拍数は異常なくらい早くなっていった。

そして、ついにオレの番がきた。

みんなはオレが高所恐怖症なのを知っている。
仲間のうちの一人が、緊張で手足が小刻みに震えているオレを見て、「ヨオ、長く待ちすぎて、寒くなったか?」と意地の悪いことを言った。
他の仲間がそのつまらない冗談に爆笑しているのを見て、オレの心拍数はますますあがった。

這い上がるように飛び込み台のうえに立つと、オレは四つん這いの態勢のまま頂上からの眺めを見た。
その高さにも目がくらんだが、そこにあがるとステージの上にたったような錯覚におそわれ、プールで遊ぶみんながオレに注目しているように感じ、緊張感も頂点に達した。

「お〜い、はやくやっちまえよ!」

上で固まっているオレを見て、ガキ大将が急かした。
その圧力に押され、オレはやっとのことで立ち上がる。
しかし、そこから前に進まない。一歩も前に足が出ないのだ。

「お〜い。そんなところでちびるなよ。ションベンのシャワーなんてかなわないからよ」

口の悪い友達が茶化した。その声につられ下を見ると、絶壁のうえに立っているようで足がすくんだ。
もう、それが限界だった…。

「ゴメン。無理」

オレは泣きべそをかきながら、へっぴり腰で後ろ向きに階段を降り始めた。

惨事が起きたのは、最後の階段に足をかけたようとした時だった。
オレは足を踏み外し、階段の角でひどく顔を打ったのだ。

そのアクシデントで、右の前歯の先端が欠けてしまった(差し歯にかえるほどでもないので、以来そのままの状態だ)。

オレのヘタレ話は、すぐに学校にひろまった。
いつしかオレのアダ名は「マエバ・カケゾウ」となり、みんなから馬鹿にされるようになった。

その時から、オレはますます消極的になり、いつも何かの選択を迫られると、やらない方を選ぶようになった。

大学受験も一回失敗しただけで逃げて、適当なところに就職してしまった。
しかも、そこもちょっと怒られただけで辞めてしまった。
あとはバイト暮らし。どこも長続きはせず、今は土建屋でバイトをしている。

この消極的な性格を直さないと、どんどん転落して一生を棒に振ってしまう恐怖に毎日苛まれている。
けれど、なかなか自分の性格を治すことはできない。

自己嫌悪に陥るとき、いつも思うことがある。
人生を狂わした、踏み込み台の上にたったあの瞬間に戻って、もう一度リベンジしたいと。そうすれば、人生がかわるのではないかと思うのだ。

オレは、グーグルマップに映っている飛び込み台の上にいる少年を見て、ふと思った。今がその時ではないかと…。

そうなれば、「善は急げ」である。
オレは、クロゼットの奥にしまいこまれた海パンを探しだし、それをリックに突っ込むと、真夏の太陽に焼けつくサドルにまたがり、あの場所にむかって力強くペダルをこいだ。

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飛び込み台の底へ 四話

初めての方はコチラから

市民プールに到着したのは、ちょうど正午であった。

計算したわけではなかったが、昼時はプールの混雑がやわらぐ時間帯だ。
昼飯を食べに帰る子どもたちが次々と自転車で帰っていく。
最初からツイていると思い、オレは思わずほくそ笑んでしまった。

「それにしても、本当に変わっていないな…」

オレは自転車を駐輪場に置いてから、周囲を見回す。

グーグルマップの映像で見たとおり、この辺りはまるでオレの小学校のころから冷凍保存されたかのように、恐ろしいくらい何も変わっていない。

この周囲一帯だけ何の進歩もないのか?

ここから一キロほど離れた新興住宅地では、あまりに風景が変わっていたため道に迷ったが、いったんここにたどり着く道がわかると、その道沿いも当時のままの風景が続いていたので、あとは迷うことがなかった。

見れば、駐車場で止まっている車も、なぜか年代物ばかりだ。

オレは当時の自分に戻ったような気になる。

ずっと願い続けてきた、もう一度人生をやり直すチャンスが本当にきたのかもしれない。

そう思うと、オレは心が踊った。

燃えるようなアスファルトのうえを駆ってきたので、汗みずくだ。早く汗を流してさっぱりしたい。

オレは額の汗を拭いながら、市民プールの建物の中にズンズン入っていった。

その時だった。

「ちょっと、アンタ」

背後から、オレを呼び止める声がした。

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プロフィール

マウントエレファント

Author:マウントエレファント
アルパカとバラとスプリング、つまり春(おまえはルー大柴か)を愛するナイスミドル?なサラリーマンです。でも同僚には、そんな趣味、ばらしません。キモイっていわれますから。残念!(古っ!)

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