第五十五話 外壁の効果

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「ところで」とケンシロウは尋ねます。「この外壁、実際に役立ったことあるんですか?」

「もちろん」と笑顔でマリーは答えます。「買い物に行くにも、病院に行くにも、この外壁があるお陰で、みんなとても助かっているわ」

「いやいや、そうでなくって」とケンシロウは顔の前で激しく手を振ってツッコミを入れます。「災害に見舞われた時ですよ」

「ああ、災害の時ね」マリーは勘違いの恥ずかしさを隠すようにコホンとひとつ咳払いをして、「それは、もちろん何度もあるわよ。例えば…そう、去年の台風の時も、助けられたわ」

「へぇ〜、そんな遠くない昔にも、そういうことあったんですか」

「ええ」と頷いて、マリーは外壁に向かって感謝するように手を合わせます。

「で、それは、ひどい台風だったんですか?」
 
「けっこう、すごかったわ」マリーは手を下ろすと、遠い目をして語り始めました。「あの時は、ワタシはちょうどこの畑で農作業をしていてね。急に空が暗くなったと思ったら、いきなりものすごい音をたててカミナリが鳴り始めたわ。それから、じきに強い風とともに激しい雨が降り始めたのよ」

「それで」

「もちろん、農園で働いていたみんなと一緒に大慌てで、外壁の中に逃げ込んだわ」

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「それでみんな無事だったんですか?」

「お陰様で、みんな身体が濡れたくらいで済んだわ」再び外壁に向かって手を合わせて感謝するマリー。「高い外壁が台風を跳ね除けてくれたお陰で、街も無事だったし」

「でも、農作物はどうだったんですか?」ケンシロウは台風の傷跡がどこにもみられない広大な農園を眺め渡しながら尋ねます。「モロに強風を受けたわけだから、相当な被害が出たんじゃないですか?」

「ええ、けっこうやられたわ」マリーは悲しそうに目を伏せます。「でも…」

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★あらすじ★

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2時間、宇宙の恐怖を味わってきました

想像しうるなかで一番恐ろしい孤独とは何かと訊かれたら、皆さんは何と答えるでしょう。
ボクは、誰もいない暗黒の宇宙に一人放り出されることだと思います。

今日、それをテーマに描いた話題の映画『ゼロ・グラビティ』を観に行って参りました。
この映画、これまでに味わったことのない、リアルな宇宙の恐怖を存分に味わえます。

ストーリーは、実に単純明快です。
地上600㎞の上空で地球を周回しているスペースシャトルで船外活動していた女性エンジニアが、ロシアが自国の衛星を爆破したことによる破片が、そのスペースシャトルを襲ったことで、暗黒の宇宙に放り出され、数々の絶望的なピンチにさらされながらも、いかにして地上に降りられるかを描いたお話です。

圧倒されるのは、本物の宇宙飛行士すら絶賛する、リアリティに満ちたその映像のすごさ。しかも迫力の3D(衝突で大破した衛星の破片が次々と目の前に飛んでくるんです! 恥ずかしさも忘れ、思わずオーバーリアクションで避けてしまいました)。
真っ暗な映画館の大画面で見ると、本当に自分が宇宙に放り出されたような心細さを味わうことができ、久々に主人公との一体感が味わえました。

ストーリーも単純明快なだけに、すぐに感情移入できてしまうんですよね。
ボクはこの映画を吹替でみたのですが、字幕を追う手間もないだけに、余計に映像に集中できてしまい、嫌になるくらい宇宙の恐怖を味わってしまいました。

それにしても、どうやってあのリアリティにみちた映像をとることができたのでしょう。
映像に関して言えば、SF映画の最高峰といっても良い出来です。

映画館でしか、あの感動は味わえないと思います。
驚異的なまでの映像の進化が見られるオススメの一作です。

第五十四話 明かされた巨大壁の謎

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 外壁の向こうに見えた光景は、ケンシロウが予想していたのに反して、海は遙か遠くに霞んで見え、その手前には防風林となる松林があり、さらにその手前には果樹園、水田、畑が広がっていたのでありました。
そして、それぞれの農園では、大勢のアルパカ星人が働いているのが見えたのです。

広大な農園に圧倒されているケンシロウに、「どう、壁の外は海じゃないでしょ」とマリーは尋ねます。

「ええ」とケンシロウは頷きましたが、すぐに思い浮かんだ疑問を投げかけます。「でも、これほど海が離れているのなら、こんなに高い外壁をつくる必要はないんじゃないですか?」
地球にいた頃、ダメ社員であったケンシロウですら、どう考えてもこの公共事業は費用対効果に優れているとは思えなかったからです。

「ヤダ!」マリーは笑いながら、外壁を見上げるケンシロウの背中をはたきました。「この壁すべてが防潮堤としてつくられたわけじゃないのよ」

「えっ。そうなんですか?」

「当然でしょ」マリーは、外壁の下から5メートルくらいの高さを指さしました。「防災用の壁としてつくられたのは、ホラ、あのあたりまで」

「はぁ…」
ケンシロウはサングラスをずらして、裸眼でマリーが指さす方向を見ます。
外壁の中腹以上は窓ガラスがはってありますが、防災用の壁というあたりは何もついていない無地の壁です。防潮堤なので、カステラ色の壁の中身はコンクリートで固められているのでしょう。

「で」とマリーは続けます。「その上は食糧貯蔵ゾーンね。そこに、この農園でとれたものを貯蔵しておくのよ」

見ると、そこも無地の壁になっています。貯蔵庫というので、中は冷蔵庫のようになっているのでしょうか。ならば、窓ガラスがついていないのも、より冷蔵機能を高めるためなのでしょう。
「なるほど」とケンシロウは感心しましたが、畑のすぐ近くに貯蔵庫があるという点についても、実に効率的だと思いました。

「そして、ホラ」マリーの人差し指は、ようやく窓ガラスのついているカ所に移動しました。「その上は、スクールゾーンよ。小学生以上の子どもたちが、あそこで勉強しているの」

「というと、アルトも」
そよ風の長女アルトのキュートな笑顔を思い浮かべてケンシロウは尋ねます。

「もちろん」

「じゃ、その上は何ですか?」
興味を覚えたケンシロウは、マリーより先に、スクールゾーンの上の窓を指さします。

「ああ、アソコは医療ゾーンよ。たまに、おじいちゃんを連れて行くわ」

「そうなんだ」
リーフの痴呆の治療はアソコでやっているのかと思いながら、高い窓を見上げるケンシロウ。

マリーはさらにガイドを進めます。「それから、その上は宿泊ゾーンね」

「宿泊って、ホテルみたいなもんですか?」

「まぁ、そんなもんかしらね」とマリー。そしてさらに高い窓を指さし、「で、その上は商業ゾーンよ」

「商業ゾーン?」

「そう。そこでは、食料品とか、日用品とか、いろいろ売っているわ。ウチもよく利用するのよ」

「へぇ~」

「で、一番上の窓のなかにはね、モノレールが走っているのよ。アレを使えば、街を一周できるわ」

「そういうわけか…」
ケンシロウはようやく、防潮堤としては過剰すぎる外壁の謎が解け、深くうなずきました。

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第五十三話 巨大壁の向こう

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「ナニ、具合でも悪いの? 急に震えだして」
マリーは心配そうに、青ざめたケンシロウの顔を覗き込みます。

「街を守るためって…」ケンシロウは、震える口の奥から声を絞りだします。「巨人から街を守るためですか?」

「は?」口をポカンとあけるマリー。それからジワジワとおかしさがこみあげてきたらしく、プッとふきだしました。「ヤダ、そんなわけないじゃないの」

「だ、だったら、何のためにあんな高い外壁があるんですか?」
笑われたことにムッとしたケンシロウは、食ってかかるように尋ねます。

「もちろん、防災のためよ」
マリーはそう答えると、外壁のほうに向かって歩き始めました。

ケンシロウはその後をついて行きながら聞き返します。「防災?」

「そうよ。水害や風害などから街を守るために、街の周囲を外壁で囲っているのよ」

つまり防潮堤のようなものなのか…。
ケンシロウは、目前に屹立する外壁を見上げます。
でも、これほど高い防潮堤が必要になるということは、外壁の向こうは余程荒い波が打ち寄せる海がひろがっているんだな。
ケンシロウは思い浮かべた喩えを口に出しました。「つまりこの街は、海に浮かぶ要塞みたいになっているってわけですね」

しかしマリーはピンとこなかったらしく、「要塞?」と聞き返します。

「だって、壁の向こうは海なんでしょ?」

「違うわ。海なんかじゃないわよ」
マリーはそう否定すると、手慣れた操作で外壁に取り付けられた扉のハンドルを回し、ゆっくりと重そうな扉を開きました。

「あっ!」
予想もしなかった光景にケンシロウは驚きの声をあげました。
想像していた海ははるか遠くに霞んで見え、その手前には広大な農園がひろがっていたのでした。

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第五十二話 巨大壁の用途

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「ひぁぁ~!」
ケンシロウは3、40メートルの高所に連なる巨大壁を見て、いきなり背後から大声を浴びせられた時のように肝を冷やしました。

「ナニ突然大きな声を出して?」
ケンシロウの悲鳴に、飛びあがるマリー。

「いや、まさかアレが壁だとは思わなかったもので」
ローズに心を奪われ漫然と歩いていたケンシロウは、行く手をふさぐ住宅と同色のカステラ色の巨大壁を、それも住宅だと思い込んでいたのでした。

「ナニそんなに珍しいものなの?」

「ええ、地球にはあんなものありません」
荒れた呼吸を整えながら、ケンシロウは答えます。

「アラそう。星によって違うことも多いのね」

「でも、何のためにあんなに高い外壁があるんですか?」

「もちろん、街を守るためよ」

「街を守るため…」
ケンシロウは、ふいに地球にいた頃夢中で読んだ漫画『進撃の巨人』を思い浮かべました。
それは、その漫画に登場する街にも、巨人から住民を守るために、その周囲に高い外壁が築かれてあったからです。
もしかして、あの漫画と同様に、あの巨大壁も巨人から街を守るために…。
そう思うと、あまりの恐怖でケンシロウの持つ物差しのように頼りなげな護衛棒は、ブルブルと震えだしたのでした。

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第五十一話 立ちはだかる巨大壁

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美しすぎるアルパカ星人、ローズから電話番号を教えてもらい天にも昇る気分のケンシロウ。先ほどまでの重い足取りとはうってかわり、いまは羽の生えたアルパカ星人のごとく、飛ぶような軽やかな足取りでマリーの前を歩いていきます。

「ちょっと、道も知らないくせに、先に行っちゃダメって言っているでしょ」と息を切らして注意するマリー。「それに、もうちょっとゆっくり歩いてもらえないかしら。こっちが年寄りだってことを考えて頂戴」

「あっ、スミマセン」と弾んだ声で答えるケンシロウ。「でも、なんか楽しくなっちゃって、身体がこう、自然に跳ねちゃうんですよね」

「なに浮かれているんだか…」呆れ顔でため息をもらすマリー。「まさか、アンタ、あのローズっていうお嬢さんに惚れたのかい?」

「えっ、バレました!」喜びを隠せない声で驚いてみせるケンシロウ。「おかしいなぁ~、オモテに出さないように厳重に注意していたのに」

しかしマリーは「あんまり期待しないほうがいいよ」と冷めた目で忠告します。「ぬか喜びになりかねないから」

「なんで、そんなことを言うのですか?」

「だって、あんな可愛い子がだよ、彼氏がいないわけないじゃない。いや、ひょっとしたら、もう結婚しているかも」

「た、確かに…」と表情を曇らすケンシロウ。十分にありえる予想をつきつけられ、瞬く間に、奈落の底につき落とされてしまいした。

「それにだよ。たとえ、パートナーがいなくても、アンタが彼女と付き合うのは難しいんじゃないのかねぇ」

「な、なんでですか!」ケンシロウは鼻息荒く反論します。「確かに、ボクは平凡な顔立ちですよ。あんなに綺麗な女性とは釣り合わないかもしれません。でも彼女、ボクに好意をもっていてくれているみたいだし、熱意をもってアタックすれば必ず思いは通じるはずです」

「いや、釣り合う釣り合わない以前に、異星人同士が結婚できるかってことだよ」

その指摘には「うっ…」と唸ったまま、言葉を失うケンシロウ。そうか。異星人同士が夫婦になるってことは、カラスと白鳥がつがいになるようなものなのだ…。

「わかったかい?」マリーは片手でやさしくケンシロウの肩を抱き、空いたもう片方の手を高く指差します。「アンタと彼女の間には、あれと同じくらいの高い壁があるんだよ」

「ひぁぁ~!」
ケンシロウは動転のあまり、絶叫しました。
マリーが指差すほうを見上げると、そこには3、40メートルほどの高さの壁が立ちはだかっていたのです。

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第五十話 喜びの展開

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「イテテッ」
マリーにつねられて痛んだ臀部を目尻に涙をためてさするケンシロウ。

「どうされました?」
美女は、ケンシロウの顔を心配げに覗き込みます。

「いやぁ、その…」ケンシロウは、マリーをおびえた目でうかがいながら答えます。「危険なことなんて、別にありません」

「それなら、ボディガードをする意味なんてないんじゃ-」と美女が言いかけます。
そこに、割って入るマリー。「それはワタシが彼に勝手に頼んだことなんだから、構わないでほしいわ」

「そ、それは、そうですよね」美女はマリーの勢いに押されて、シュンとしてしまいます。「深入りしてしまいまして、本当に申し訳ありませんでした」

ケンシロウは、身を小さくしてしおれている美女を見て、たまらない気持ちになり、「そんな…謝る必要なんてないですよ。アナタはただ、この老婆に何か危機が迫っているのではないかと、心配してくださっただけなんですから」と弁護し、ちらりとマリーに目をやって、「あなたのそのお気遣いを、悪く受け取ったほうに問題があるのです」

「あんた、ちょっと」
マリーは細い目を釣り上げて、ケンシロウの右の二の腕をつねります。

しかし、今度はケンシロウも負けていません。その痛みに耐え、ぐっと奥歯をかみしめて言い張りました。「アナタは、絶対悪くない!」

しかし、美女は深々と頭を下げて謝罪を繰り返します。「いえ、ワタシがいけないのです。ワタシがそのことを知ったところで、何のお助けもできるわけではありません。ならば、それは野次馬とおなじ愚かな行為ですものね。お婆さま。どうかお許し下さい」

「いや、そんな…」今度は、マリーが恐縮して身を縮めます。「お嬢さんが悪いなんて、全然思っていませんよ。気にしないで、くださいな」

「そうですか。ありがとうございます」美女は、心が軽くなったように晴れやかな笑顔を浮かべます。「でも、そのような大変な思いをしているときに、ワタシったら、うっかり植木鉢を落としてしまったりして。さぞ、驚かれたことでしょう。この償いは、言葉だけで済むようなものではありません」

「いえ、そんな、本当にお気になさらないで」と笑顔で断るマリー。

「そうですよ。ボクの俊敏なボディガードで、こうしてこの老婆も難を逃れたわけですから」とケンシロウも続きます。

「でも、それじゃワタシの気が済まないのです」美女はケンシロウのほうを向いて言いました。「私の名前は、ローズと言います。今は何も用意できないので、近いうちにお食事とか、なにか償わせていただきたいと思います。つきましては、ご連絡先を教えていただけませんか?」

「は、はい喜んで!」まさかの美女からの誘いに有頂天になるケンシロウ。とっさにスマホを探しますが、それは背広の内ポケットに入っていますし、たとえあったとしても、それはこの星では使えるはずもありません。「すみません。ボク、電話もっていないんです」

「そうですか」と声を落とすローズ。しかしペンを取り出し、メモ帳にサラサラと数字を走り書きすると、それを切り取り、ケンシロウに差し出します。「これワタシの電話番号です。2日後に、ここに電話してください。それまでに、プランを立てておきますので」

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「は、はい!」ケンシロウは、マスクに隠された鼻の下を思いっきり伸ばしてそれを受け取ります。「必ず連絡させていただきます!」

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★あらすじ★

師走を元気で乗り切るコツ

12月に入ったと思ったら、もう半ば。もういくつ寝るとお正月って時期になってしまいました。一年なんて早いものです。

師走は、仕事量も増え、心身ともに疲れがたまりやすい時期です。おまけに、こんなに忙しくて寒い時期に、忘年会(忙しさのピークでその年のうさを晴らせるわけないだろ〜)なども毎週のように行われ、余計に疲労度が増します。

そういうときは、いかにムダな疲れをためないテクニックを駆使できるかが、繁忙期をへたばらずに乗りきる決め手になります。

そういうとき役立つのは、物理の知識。例えば、重い石を動かすにも、バカ正直に体当りするよりも、テコの原理を使ったり、車輪をつけたりするとかで、体にかかる負担が少なく、成果が上がりやすくなるということです。

いっぱい頑張ったからそのぶん認めてもらいたいと考えるのは、力の使い方を知らない半人前の発想です。
しかしベテランは、やり方をかえるだけで、その半分の力で容易に物事が動くことが多いと経験から知っているので、こういう時に強いものです。

力の使い方を知るだけで、仕事の疲れはだいぶ減る。それは仕事だけでなく、人生においてもいえると思います。
ま、それも、いっぱい失敗を重ねて、痛い目にあって、学べることなんですけれどもね。

「気に入らぬ 風もあろうに 柳かな」の心構えで、すべてを柔らかく受け流して、それでも芯が折れない柳のようにいきたいものです。

第四十九話 語れない武勇伝

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若くて、見目麗しい女性からそのような優しい言葉をかけられた覚えのないケンシロウは、「よ、よろしくお願いします」とうわずった声で、遠慮無く傷口の消毒をお願いしました。

ところがです。
ケンシロウが目をつぶって美女の唾液の消毒スプレーを待っていると、「じゃ、消毒液をとりに行ってきます」と美女は立ち上がり、自宅の玄関のほうに踵を返してしまったのです。

「はぁ…」
当てが外れて、間抜けな表情で肩を落とすケンシロウ。
その後ろで、マリーは美女が家の中に消えるのを見送りながら、「いいお嬢さんだね」とつぶやきました。

「ええ、とっても」
ケンシロウもしみじみ頷きます。

「でも、最近越してきたのかね…」と首を傾げるマリー。

「はい?」

「いえねぇ、初めて見る顔だからねぇ。顔の感じも、ちょっと、アルパカ星人離れしているし」

「そうなんですか?」
どこがどうアルパカ星人離れしているのかと、ケンシロウはマリーの顔をまじまじと見つめながら、美女の面影と比較してみます。確かに、美醜の点において、天と地ほどの差があるとケンシロウは思いました。

「何よ、急にじっと見つめて」マリーは安く値付けされた顔をしかめます。「ワタシの顔に何かついている?」

「いえ、別に、何でもありません」ケンシロウは慌ててマリーから視線をそらすと、美女宅の玄関のほうに顔を向けました。
すると、グッドタイミングで、美女が玄関から出てきました。

「スミマセン、お待たせしちゃって」
消毒液と絆創膏を手に持った美女は小走りにケンシロウのもとに駆けよると、ペコリと頭を下げました。

「いえ、全然、お待たせされていません」
緊張のあまり、おかしな言葉遣いをするケンシロウ。

「そうですか」とクスリと笑う美女。それから、直立不動のケンシロウの前にしゃがむと、「じゃ、消毒しますね。ちょっとしみますけど、我慢してください」と断って、シューと傷口に消毒液を吹きつけました。

「くう~っ!」
予想以上の刺激に、思わず悲鳴をもらすケンシロウ。

「大丈夫ですか?」
美女は絆創膏を貼りながら尋ねます。

「ええ、どうってことありません」強がりを言って、男気をみせるケンシロウ。「何なら、消毒液を全部かけてもらっても、けっこうです」

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「まぁ、頼もしいこと」と笑顔で受け流す美女。しかし、ケンシロウが右手に持っている棒に目をやると、真顔に戻って尋ねます。「でも、何をされていたんですか? そんなものを持って」

「ああ、これですか」とケンシロウ。自慢げに棒を持ちあげて見せ、「護身用ですよ。ハハハ、いえナニ、ボディガードをやっているもんで」

「ボディガード」美女は目を丸くして、ケンシロウの後ろに立つマリーに視線を移します。「お母様の?」

「ええ、まあ。でも、母ではないんですけどね。世話になっている家の大奥様なんですよ」

「そうなんですか」感心したように美女は熱い視線をケンシロウに注ぎます。「偉いですね」

「いや、それほどでも」照れ笑いを浮かべながら、ケンシロウは気取った声で答えます。「お世話になっているんですから、当然のことです」

「でも、ボディガードをつけなくっちゃいけないくらい危険なことがあるんですか?」

「それは、もう」ケンシロウがペラペラと武勇伝を語ろうとすると、マリーはケンシロウのお尻をつねりました。「痛~っ!!」

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★あらすじ★

ローズ

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ローズ

2階のベランダで花の手入れをしていたら、うっかり手を滑らせ植木鉢を落としてしまい、それが危うく真下にいたケンシロウに命中しそうになる。
しかし、それがきっかけで、ケンシロウと知り合いになる。
ケンシロウはローズに一目惚れし、ローズもマリーを身を挺して守ったというケンシロウの男らしさに好感を持つ。
はたしてこの出会いが発展し、ケンシロウ初の彼女になってくれるか。今後の展開が楽しみ。

22歳。最近アルパカタウンに越してきたばかり。ラマ星人。謎も多い彼女である。

第四十八話 二階から媚薬

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ガシャーン
ケンシロウの足元で激しい音をたてて割れる植木鉢。衝撃で飛び散った破片がケンシロウの脛に当たりました。

ヒ〜ッ!!
仰天のあまり大きく体をのけぞらして悲鳴をあげるケンシロウ。あと一歩、手前に出ていたら脳天に命中し、あの世に行っていたかもしれません。
おお、神よ、あなたはまだボクを見捨ててはいなかったのですね。ケンシロウは神に感謝し、思わず、天を仰いで合掌しました。

しかし、その視線の先に見えたのは、二階のベランダから心配そうに下を見おろす若くて美しいメスのアルパカ星人でした。
そのメスのアルパカ星人は、ケンシロウ目が合うと、「あっ、スミマセン。大丈夫でした?」と声をかけてきました。

「はい…全然…大丈夫…です」
一目惚れというやつでしょうか、ケンシロウの胸を激しく打っていた鼓動は、いつしか恐怖のそれからトキメキのそれへとかわっていました。

第四十八話+のコピー_convert_20131207065816

「今、行きますから、ちょっと待っててください!」
その美女は、女子アナにしてもいいくらいの、よく通る美声でそう言うと、色とりどりの花が咲き誇るベランダから姿を消しました。

「なんだ、事故だったのね」と胸を撫で下ろすマリー。「よかったわ。狙われたわけでなくって」

「本当に…良かった…です」顔を火照らせ、うつろな目で頷くケンシロウ。「いい出会いがあって…」

「ナニソレ」と呆れるマリー。そしてケンシロウのお尻を軽く叩き、「何に喜んでいるのよ」と一喝。

「えっ、あっ、いや別に…」
喝を入れられ、我に返ったケンシロウ。心の動揺を隠すために、植木鉢の破片が当たった右の脛のあたりのホコリを払ってごまかします。

「大丈夫なの? 怪我してない?」
マリーはしゃがむと、ケンシロウのズボンの裾をめくりあげようとします。

「いや、大丈夫ですから」とケンシロウ。少し痛みはありましたが、たいした怪我は負っていないようです。

「でも、ちょっと見せてみなさいよ」
強引に裾をめくりあげるマリー。そんなことをしていると、背後でドアが開く音がしました。

彼女だ! 再び胸が高鳴るケンシロウ。

振り返ると、ケンシロウのマドンナは大急ぎで駆け寄ってきます。
マドンナはケンシロウの前に立つと、「お花のお手入れをしていたら、うっかり手を滑らせてしまって、本当にスミマセンでした!」と深々と頭を下げ謝罪しました。
その拍子に、ふわりと漂ってくるバラの香りに似た芳香。ケンシロウはうっとりし、「ハヒ〜ッ、ぜんぜん大丈夫ですから」と鼻の下を伸ばして答えました。

しかし、マドンナはケンシロウの足元に視線を落とすと、表情を曇らせます。「でも、血がちょっと出ていますよ」

ケンシロウも視線を落とすと、確かに、マリーがめくり上げたズボンの裾から露出した右の脛には、血が滲んでいるのが見えました。

「だ、大丈夫ですよ。これくらい」
いつもなら血をみると大騒ぎするくせに、ケンシロウは彼女にいいところを見せようと、強がってみせました。

「そうだよ。これくらいならツバでもつけとけば、治っちゃうよ」
マリーも同調して、横から口を挟みます。そして、右の手のひらに勢い良くツバを吐きつけると、その手をケンシロウの脛に当てようとしました。

「ち、ちょっと、やめて!」ケンシロウは絶叫すると、大慌てで膝を抱え上げます。「そんな消毒、勘弁して下さい!」

「まぁ、失礼ね」と頬を膨らますマリー。「ワタシ、変な菌なんてもっていないわよ」

「いや、それはわかっているんですが、ちゃんと消毒したほうがいいかと…」
また、マリーを怒らせてしまったと身を縮めるケンシロウ。

そんな二人やりとりを戸惑った表情で見ていたマドンナは、「じゃ、わたしが消毒しましょうか?」と小さく手をあげました。

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第四十七話 前線は御免

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「ち、ちょっとナニコレ、気味悪い!」
マリーは、その恐ろしい脅迫文句が書かれた紙を放り投げました。
その紙はヒラヒラと舞い、今度はケンシロウの顔に覆いかぶさります。

「ヒィーッ!!」卒倒しそうな勢いで、その紙を払いのけるケンシロウ。「だから言ったでしょ、そっちに行かないほうがいいって!」

「アラ本当! アナタの予言、当たったわね」マリーは驚きを隠せず、目を丸くしてケンシロウを見つめます。「でも、この脅迫文、誰に向けて書かれたものかしら?」

「そ、それは…」それが自分宛に送られたギースからの脅迫文に間違いないと確信するケンシロウ。しかし、それを正直に打ち明けたら、それこそ抹殺されてしまいます。ケンシロウは恐怖心に負け、惚けるしかありませんでした。「その脅迫文を、最初に顔面で受けた人ではないかと…」

「それって、ワタシ?」マリーは自分を指さし絶叫しました。「ナンデ、ナンデ、ワタシ、人に恨まれるような覚えないわ。それに、約束って何、何なのよ〜!」

「さぁ? 何なんでしょうね」
申し訳ないと心のなかで詫びつつも、惚け続けるしかないケンシロウ。しかし、マリーは永遠に解けない謎に苦しみながら、死ぬまで怯え続けるかもしれません。罪深い嘘です。

「やっぱり…」マリーは、すがるような目でケンシロウを見ます。「アナタにボディガードをお願いしようかしら、イヤ、お願いします。だって、アナタ、一寸先が見えるんですもの。ワタシより先に危険を察知できるはずよ。お願い、助けて!」

「はぁ…」ボディガードしてもらいたいのはコッチのほうだと泣きたくなるケンシロウ。しかし、嘘をついた代償は引き受けなければなりません。「わかりました。じゃ、ワタシが後方支援をしますんで、先に行ってください」

「ち、ちょっと、ナニ言っているのよ。前線のほうが危険じゃない。アナタが先に行ってよ!」
マリーは怪力でケンシロウの背中を押し出します。

「エーッ、やですよ」
しかしケンシロウも火事場のクソ力を出し、マリーを先に行かそうと身を翻します。

「何でよ」
マリーもケンシロウの技を盗んで、身を翻します。

「だ、だって…」さらに返し技をしながら、必死で探した言い訳を口走るケンシロウ。「だって、ボクが先に殺されたら、誰がアナタを守るというのですか」

「それは、そうね…」とマリー。しばらく思案し、道端に転がっていた棒を拾うと、「じゃ、並んで歩きましょ。で、何か危険を感じたら、これでワタシを守って」と言って、ケンシロウにその棒を手渡しました。

「この棒で、立ち向かえというのですか…」
物差しのように、薄っぺらで頼りない棒を眺めながらケンシロウは唸ります。

「素手よりはマシでしょ」と無茶を言うマリー。そして、その棒よりよっぽど攻撃力がありそうな怪力でケンシロウをお尻をピシリと叩きます。「さぁ、男だったら、覚悟を決めて行く!」

「痛〜ぁ!!」
あまりの激痛に飛びあがるケンシロウ。

「たったと行かないと、もっと痛いのが飛ぶわよ」
開いた右掌に、ハァ〜ッと荒い息を吹きかけるマリー。

「わ、わかりました」
ケンシロウは逃げるように身を後退させながらも、へっぴり腰で棒を振りあげてみせました。

と、その時です。
目の前に落下してきた植木鉢が、激しい音をたてて地面に叩きつけられたのは…。

第四十七話+のコピー_convert_20131201120110

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第四十六話 ギースの脅し

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「さぁ、それじゃ出発するわよ」
あっという間に5分が経ち、マリーは地べたに座ってついた砂埃をパンパンと払いながら立ち上がりました。

「えっ、もう…」ケンシロウは腕時計をはめてもいない右手首に視線を落とすと、マリーを見あげて言いました。「まだ1分くらいあるんじゃないですか?」

「往生際が悪いわね」マリーはケンシロウのその右手首をつかみ、ものすごい力で引っ張りあげました。「さぁ、立った、立った」

「チッ、仕方ないなぁ」
舌打ちをして立ち上がるケンシロウ。

「仕方がない?」マリーはケンシロウを睨みつけ、ボキボキと指を鳴らします。「それはこっちの台詞よ」

老人とはいえ、怪力をもった獣です。本気で殴られたら、複雑骨折の重傷を負いかねません。
もうこれ以上、怒らせたらまずいと、ケンシロウは不自然なほど明るい声で言いました。「アレ? 何だか、急速に体調が回復してきたぞ。今日も元気だ、ご飯がうまい。さぁ、早くそのご飯の素になるお野菜を採りに行きましょう! ねぇ、マダム」

「何がマダムよ。調子がいいわね」マリーは、仕方がないわねといった感じで鼻で笑うと、行く手を指さし号令をかけました。「じゃ、レッツゴー!」

それを受け、ケンシロウも「オー!」と元気な声をあげると、逆方向につま先を向けます。

「ちょっと、そっちじゃない!」
マリーは先ほどよりも強い力で、ケンシロウの腕を引っ張ります。

「どうしても、そっち行きます?」

「もちろん。こっちが畑に行く近道だもの。それにアナタ、疲れているんでしょ。遠回りすれば余計に疲れるだけじゃない」
マリーはケンシロウの手を引っ張ったまま、機関車のごとく歩き始めます。

どうやっても連結を外せず、引きずられていくケンシロウ。「わかりました。行きます。行きますよ。行けばいいんでしょ」渋々決意を固めると、錆びた車輪が渋く動き出すような、重い一歩を踏み出しました。

「そう、しっかり自分の足で歩くの。わかった?」とマリー。

「はい…」
ギースとの衝撃の再会から10分近く経ったので、もう大丈夫だと思いつつも、一歩一歩、ギースが顔をだした角に近づくにつれ、緊張で鼓動が早まるケンシロウ。

そしてついに、マリーの一歩が、恐怖のその角に…。

と、その時です。
どこからか、一枚の紙がヒラヒラと舞ってきて、マリーの顔を覆いました。

第四十六話+のコピー_convert_20131124155138

「ちょっと、何よ、コレ?」マリーは驚いて紙をとると、それを読み上げます。「ナニナニ、約束を守らないと、殺すぞ」

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★あらすじ★

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アルパカとバラとスプリング、つまり春(おまえはルー大柴か)を愛するナイスミドル?なサラリーマンです。でも同僚には、そんな趣味、ばらしません。キモイっていわれますから。残念!(古っ!)

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