客寄せパンダ

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モテ臭力

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散髪

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ちなみに毛を剃ったあとのアルパカの画像はコチラ

我が家の春

我が家にもようやく春が訪れた。
息子が3浪の末に東大に合格したのだ。

この三年間、息子はとても苦労した。
トイレに入る時までも参考書を持ち込むほど、寸暇を惜しんで受験勉強に励む毎日。
一人息子のその懸命な姿に胸打たれ、私は何かできることはないかとオロオロする毎日であった。

しかし母親の私にできることといったら知れている。
例えば、夜食をつくってやったり、滑るなどの縁起の悪い言葉を避けたり、またそういう縁起の悪いことが起きないように床のワックスがけとかをしないようにすることぐらいだった。

だが、家族一丸となって戦った受験戦争は、ようやく終止符が打たれたのである。
一時間前、合格発表を見に行った息子から吉報を告げる電話があったのだ。

私は息子をピカピカの玄関で迎えようと、玄関掃除をした後、三年間避けていた床のワックスがけをはじめた。

やっと、ピリピリした縁起担ぎの生活から解放されたのだ…。
私は久しぶりの晴れやかな気分で、たっぷりとワックスをつかって床を磨いた。

そうだ、主人にもこの喜びを伝えなければ…。
私はワックスがけを中断し、居間にある電話機に向かった。

ちょうどお昼時間なので、電話をかけても迷惑にはならないだろう…。
私は主人の携帯番号に電話をかける。

すぐに主人が出た。

「洋介、合格したわよ。東大に」
私は明るい声で報告する。

「そうか、やったか」私以上に明るい声をあげる主人。「これでようやくトンカツ生活から解放されるな」

「そうね」
私は苦笑した。
験を担いで、週に二三度、夕食にトンカツを出していたからだ。

「じゃぁ、今日は豪華に寿司でも食べに行くか」と主人は言った。「早く帰るようにするよ」

「そう、うれしいわ。夕食をつくらないで済むなんて」
食事の時間すらも惜しむ息子と暮らしていたので、この三年間、家族揃って外食に出かけたことは一度もない。
私は久しぶりの晩飯づくりの解放に胸踊らせ、受話器を置いた。

と、その時だった。
玄関の方から大きな音がした。

びっくりして玄関のほうに行くと、息子が玄関前の廊下で足をかかえて悶えていた。

「ど、どうしたの」
私は驚いて声をかける。

「スベって転んだんだよ。ワックスかけすぎ!」息子は苦痛に顔を歪めながら私を睨む。「足の骨を折ったかもしれない。救急車呼んで」

なんとしたことだ。
ようやくスベることを恐れる暮らしから解放されたというのに…。

ドクターX

ドクターX+のコピー_convert_20141025062846

紅葉狩り

信州の志賀高原の方へ、紅葉狩りに行って参りました。
曇りがちの天気でしたが、とても綺麗でした。

ちなみに、写真に写っているふたりの女の子…、

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ボクのムスメでは、ありません。
しかし犬はというと…、ボクの愛犬ではありません。

次は、枯れ木に腰掛けてポーズをきめている老人…、

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ボクのオヤジではありません。
もちろん、ボクでもないです。

三度目の正直で、紅葉を楽しみながら快走するGT−R…、

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ボクの愛車ではありません。

ボクの愛車は、

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なわけありません。

でも、どれを撮っても絵になりますね。
癒やされました。

サプライズ

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ボクの愛車 Part5

行きつけの中古ショップで、またまた、お宝を発見してしまいました。

ランボルギーニ・レヴェントン。

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2007年にデビューした、ムルシェラゴというモデルをベースとしたマシンです。
20台のみの限定モデルで、100万ユーロという途轍もないお値段。

それがミニカーにまで及んでか、中古品なのに1万2千円もしました。
43分の1サイズなのにです。

しかしミニカーも限定生産のため、モタモタしていると買いそびれてしまいます。
というわけで、エイヤッと購入してしまったというわけです。

それにしても、このステルス戦闘機のような先鋭的なデザイン。
かっこいいの一言に尽きます。

色も硬質なマッドブラックでシブい。
衝動買いでしたが、手に入れて本当に良かったと思います。

それにしてもこの精密さはスゴいです。
こんなに小さいのに、一つも妥協しているところがありません。

外観はもちろん、エンジンルームも室内も、驚くほど忠実に再現されております。
これを見れば、このくらいのお値段がするのも致し方ないなと納得してしまいます。

そのうちカウンタックを題材にショートショートを書いてみたいと思っております。
さて、どんなストーリーにしましょうか。

バックが上手

バックが上手+のコピー_convert_20141019172016

いつまで続くか朝型

里にも紅葉がおりてきて、街並みが色彩鮮やかになってきましたね。
ボクは自転車で通勤しているんですが、あまり忙しくない朝は、紅葉がきれいな通りのコースにかえて、この時期だけの贅沢を味わっています。

といいながら、欠伸が出るわ出るわ。
その原因は、ブログを書く時間を朝方にしているからです。

朝方といっても、起きる時間は午前4時前後。
早いときは、午前2時台。
朝方とはいえない時間かもしれません。

幽霊がパワフルに活動し回るようなその時間帯に、この狭~い、狭~い書斎でブログを書いているわけです。

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従って、通勤途上で頻繁に欠伸がでるというわけです。

朝のニュースを受け持つアナウンサーの起床するような、この超早起き生活を初めて半月ぐらい経ちましたが、日ごと、寒さが増して辛くなってきております。
寒さが厳しい真冬はとても無理でしょう(会社に行く頃には氷の彫像になっているかもしれません。題名『ブログを書く人』)。

仕事で疲れてぐったりの夜(というか、晩酌でほろ酔いの夜)よりも、邪魔の入らぬ早朝に集中して書くのが効率的なので、こういう習慣を続けているのですが、そろそろ夜型に変えようかとも考えております。

しかし朝方の投稿をしてわかったことですが、けっこう早起きなブロガーの方が多いんですね。
そういう方々をみていると、こんな弱音を吐いていられませんね。

もうちょっと、朝型で踏ん張ってみようと思います。
ラジオ深夜便で4時台にやっているコーナー「明日への言葉」を聴く楽しみも捨てがたいですし。

秋雨の唄

仕事が終わり、渋谷駅に向かう最中だった。

急に夜空から、冷たい小雨が降ってきた。
朝の天気予報では降水確率が低かったので、傘をもってこなかった。

それは私だけではなかったようで、私と同じように多くの人が傘代わりにカバンを頭の上に掲げ、渋谷駅のほうに小走りに向かっていく。

足元を濡らさないように下ばかりを気にして歩いてたら、誰かと肩が当たってしまった。
謝罪を言うために、その人の顔を見あげると、私は驚いた。

「洋子…」

「雅夫さん…」

5年ぶりの再会に、目を丸くして顔を見合った。
洋子は元カノである。

風のうわさによると、洋子も結婚をして幸せな家庭を築いているようだ。

しかし所帯じみていないスーツ姿の洋子は、別れた当時と少しも変わっていない。
そう、別れた時も、こんな雨の夜だった…。

「雨の中じゃ、立ち話もできない。ちょっと、どこかで話さないか」と私は誘った。

「ええ、そうしましょう」
洋子は頷き、僕らは渋谷駅に背を向けた。

それから原宿をまわり、赤坂にある昔よくふたりで行ったバーで、思い出話に花を咲かせた。

一気に付き合っていた頃にタイムスリップしたような気分になり、私は洋子を愛おしく思い始めた。
今でも好きだという気持ちはかわらない。
それは洋子も同じようだった。

しかしふたりとも所帯を持っている。
ここらでブレーキをかけないと大変なことになると思い、高輪、乃木坂、一ツ木通りと、小雨のなか懐かしいデートコースを回って別れた。

そして再び渋谷駅に向かおうと、ひとり歩き始めたときだった。

「ちょっと、あなた」
背後から聞き覚えのある声がした。
振り返ると、やっぱり妻だった…。

「なに、今の人」
妻は眉間にしわを寄せ、私を睨んでいる。

「いや、取引先の人だよ。ちょっと仕事の打ち合わせをしていただけだ」
私はとっさに嘘をついてしまった。

「下手な嘘ね。知っているのよ、あの女の人。あなたの元カノなんでしょ」

「えっ…」
言い逃れができない窮地に追い込まれ、私は言葉を失った。

「久しぶりに会って、焼け木杭に火がついた?」妻は拳で私の胸をたたいて攻寄る。「それとも、私に隠れてずっと付き合っていたの?」

「馬鹿言ってんじゃないよ」
私は笑い飛ばし、いつも思っているのはお前のことだけだと言った。

しかし妻は機嫌を直さない。
「よく言うわ。いつも騙してばかりね」と、噛みついてきた。

そこで、口論を続け、私はどうにでもなれと開き直って言った。
「3年目の浮気ぐらい大目に見ろよ」

すると、妻はさっきよりも強く私の胸を拳でたたいた。
「両手をついてあやまたって許してあげない」

なんか今晩は、どこかで聴いた歌のようなことがふたつも続いた…。
私は本降りになってきた雨に濡れながら、そんなふうに感じた。

二次災害

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第九十話 不審者の正体

★初めての方はこちらから★

ローズだと名乗る不審者の言動にケンシロウとブラウンが戸惑っていると、その不審者は後頭部に両手を回し、何やらゴチャゴチャやり始めました。

しばらくすると、シャーッという音がして、何と頭の皮がめくれるではありませんか!
ケンシロウは何の脱皮が始まったのかと、呆然と成り行きを見つめます。

さらに驚いたことに、そのめくれた頭部の中から、ローズの顔がニョッキリと現れました。

第九十話+のコピー_convert_20140803090534


「ローズさん!?」
予想もしなかった再会に、ケンシロウの顔に喜びと驚きのミックスされた複雑な表情が浮かびます。

「な、なんで、そんな着ぐるみなんて着ているんだ?」
ブラウンも驚きの声をあげます。

「エヘッ、驚いた」
ローズはイタズラっぽい笑みを浮かべます。

「当たり前だ!」
ブラウンは怒気を含んだ声で返します。

「ごめんなさい」ローズは、やっちゃった、というように舌をペロリと出します。「でも、普通に出迎えたらおもしろくないじゃない。ねぇ、ケンシロウさん」

「はぁ…」ローズの可愛らしい仕草にすべてを許してしまっていたケンシロウは、大きく頷いて答えます。「それは感動の再会ですので、サプライズがあったほうがいいと思います」

「それに着ぐるみを着ていたのはわけがあるのよ」とローズは言います。

「何だ、その理由というのは」
ブラウンはまだ怒りが収まらないといった強い口調で聞き返しました。

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★あらすじ★

ああ イッコーさん

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ボクの愛車 Part4

また衝動買いをしてしまいました。

今度のミニカーは、スカイラインGT−Rの5代目 BNR34型(1999年-2002年)です。

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中古品ですが、6千円もしました。

しかし、この車のイメージカラーであるブルーカラーに心を奪われてしまいました。
実車の43分の1の大きさですが、細部まで精巧につくられているのにも、やられました。

欲しかったんです、この車。
戦闘的なルックスで、実にかっこいい。

このルックスは、現在のGT−Rでさらに尖ったものになりますが、スカイラインという名がついたGT−Rはこれが最後になります。

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日本の誇るスーパースポーツカー。
それはいつも僕にとって、特別な存在でした。

スーパーカーブームの頃に少年だったボクは、いつまでもスーパーカーへの憧れは失せません。

しかし相変わらず、スーパーカー冬の時代は続いております。

燃費が悪い、維持費がかかる、それでいて居住性が悪く、荷物もろくに積めず、なおかつ乗り心地が悪いなどなど、敬遠される理由はたくさんあるので、開発費を膨大にかける割に、あまりに売れない。
要は商売にならないので、企業側も力を入れなくなったでんでしょうね。

多くの消費者にとって、車は趣味というより、生活するための道具なのです。
いくら走りが良くて、格好が良くても、経済的で使い勝手の良い道具でなければ、パスされて当然なのです。

それでも、スポーツカーのない世界はつまらないと思います。
車にとって本質的に追求されるべきものは、走りであり、それを高めるためのデザインなのです。

それを得るために、すべての虚飾をはいだとき、ウソのないそのクルマの素質が露わになるからです。
その潔さに、格好のいい生き様をみるような気がして、惹かれてしまうのです。

乗り越える薬

この坂を登るたびに思い出す、あの大雪の日のことを。

半年前のあの時、オレはかなり参っていた。
仕事で大きなトラブルを抱え、眠れない夜が二週間以上も続いていた。
未来にまったく希望がもてず、ガス欠になってしまったのではないかと思うほど、生きるエネルギーがわいてこなかった。

オレはついに音を上げて、心療内科に行った。
飛び込みだったが、オレがあまりにヘタっていたので、その日のうちに診てくれるという話になった。
ただし診るのは、いちばん最後になると言われた。

オレはいったん家に帰り、約束の午後7時15分に間に合うように家を出た。
昼過ぎから降りだした雪は、その頃には40センチ以上の積雪になっていた。

FFの馬力のない愛車で、その心療内科に行くのはかなり難渋した。
そのため、余裕をもって出たはずなのに、そこに到着した時刻は、午後7時30分近くになってしまった。

それでも前の診察がまだ終わっておらず、オレの診察は八時近くになった。
診察の結果、オレは初期のうつ病と診断された。
薬物療法による治療が必要だと言われ、近くの薬局で処方薬をもらいに行った。

そしてひざ上まで積もった雪をかきわけながら、やっとの思いで離れた駐車場に置いてある愛車に戻った。

正直言って、薬にあまり頼りたくなかった。
薬に頼るのは負けだというプライドと、薬を飲んでも仕事のトラブルが消えるわけではないという現実の壁があったからだ。

そう、この愛車を埋める大雪のように、薬を飲んでも何も解決されやしない…。
そう思うと、オレはまたも押しつぶされそうになった。

オレは暗澹たる思いに浸りながら、車を動かした。
さらに積雪を増した道路は、車の運転を難しくさせた。
ハンドルは思うように切れないし、ブレーキもきかない。

よちよち歩きの赤ん坊のようにゆっくりと車を走らせたが、ついにオレの車は坂道の途中であがらなくなってしまった。
こうなると手に負えない。

外にでると、暗い雪道でぽつんと立ち往生している愛車が、まるで心身ともに弱って絶望の淵に立たされている自分のようにみえた。

どうやってこの窮地を乗り切ればいいか頭を痛めていると、古いランクルが愛車の後ろで止まった。

「弱っているようだね」
ランクルから降りてきたごつい体つきの男が声をかけてきた。
そして雪に埋もれたオレの愛車の状態を見て言った。
「こりゃ、自力じゃ無理だ。オレのクルマで引っ張ってやるわ」

救いの神に礼を言うと、男は熊のような髭面の顔を、それに似合わぬ人懐っこい笑顔にかえて言った。
「なあに、困ったときはお互い様だ」

男のお陰で、愛車は坂の上まで牽引され、オレはなんとか無事帰宅することができた。

夕食後、オレは躊躇なく薬を飲むことができた。
オレの気持ちをかえてくれたのは、あの4WDに乗った救世主であった。

大雪であるという事態は、オレにとってもあの救世主にとっても同じである。
しかし、彼はこの困難を乗り越えることができた。
それは、4WDという雪道に強いクルマを所有していかたらだ。

ならば、オレも薬の力を借りてもいいのではないかと思ったのだ。
大切なのは、生きるエネルギーを取り戻して、この困難を乗り越えることなのだ。
現実は変わらなくとも、自分を変えることに今は全力を注ぐべきだという光が、ようやくオレの目前にひろがった。

そのお陰で、オレは減薬ができるまでに回復した。
仕事の困難もクスリと仲間の力をかりて、どうにか脱出することができた。

吹雪で視界のきかなかったあの坂道の先に、きれいな朝焼けの空が広がっている。
明けない夜はない、とオレはしみじみ思った。

チャンス!

今回の話は、1993年にフジテレビでやっていた「チャンス!」というドラマの二次小説です。
三上博史さん演ずる主人公本城裕二という渡米帰りの忘れ去られた歌手が、再びスポットライトをあびるまでのサクセスストーリーです。

昔のドラマで、それほど視聴率をとれていたわけではないので、ドラマ自体が忘れ去られているかと思いますが、ボクはけっこう好きなドラマでした。

どん底であっても、プライドが高く、ビックマウスな主人公に惹かれましたし、彼の歌う「夢 with You」も大好きでした。

続編もあると匂わせる終わり方でしたが未だにないので、二次小説で復活させようと思い、投稿した次第です。

ご存知の方は皆無に近いと思われるドラマなので、何が面白いのかわからないかと言われそうで、ビクビクしております。

どうか筆者のワガママをお許しいただき、お付き合い下さい。

では、スタート。


「日向麗太さんですよね」
若い女性芸人が、かつてワンダーミュージックの売れっ子歌手であった日向麗太に駆け寄る。
彼女の後ろにいるカメラマンも、日向にズームアップする。

「そ、そうですが…」
突撃取材を受けるいうセッテイングであるが、久々のテレビ出演に極度に緊張し、演技が不自然になってしまう日向。

「カット!」
当然、撮り直しとなる。

「ハァ〜、オマエ相変わらず、ダイコンだな」カメラの後ろで、ふんぞり返って座っている本城裕二はヤジをとばす。「だいたい、『あの人は今』なんてクソ番組、よく引き受けたな。暇な歌手活動を笑われるだけじゃねえか。あの人は暇、なんてな」

「ほっといてください」ふくれっ面で、日向は嫌味を吐く。「どうせ、ボクは本城さんみたいにアーティストではないですから」

しかし本城は、それを正当な評価と受け取ったようで、「わかっているじゃねえか」誇らしげに高く片足をあげて、足を組む。「オレは本物だからな。その差が、こういう結果となって現れているんだ」

「ちょっと、スミマセン」
女性芸人が本城に顔をむける。

「なんだ、取材か?」

「いえ、違います」迷惑そうな表情で首を振る女性芸人。「マネージャーの方は黙っていてもらえますか」

「マネージャー? オレがか…」本城は噛みつくような勢いで怒鳴る。「オマエ、馬鹿か! 本城裕二を知らないのか」

「知りません」
あっさり答える女性芸人。

「あの名バラード『夢 with You』を唄った本城裕二だぞ」

「なんです、その歌?」
女性芸人は首を傾げ、カメラマンを振り返る。

カメラマンも首を振る。
その後ろで、失笑する日向。

「おい、何だお前ら」マグマが噴火するように、椅子を倒さんばかりの勢いで立ちあがる本城。「ディレクター呼べ! 馬鹿にしやがって」

あまりの剣幕に、仕方なくスマホで連絡をとる女性芸人。

数分すると、黒塗りのクラウンが到着した。

そして後部座席から、大きなサングラスをした華やかな中年女性が降りてきた。
おそらく彼女がディレクターなのだろう。

「アラ、本城さんじゃないですか」
本城を見るなり、その中年女性は明るい声をあげる。

「ホラみろ」本城は得意気に女性芸人に視線をむける。「デイレクターは、ちゃんとオレのことを知っているだろ」

「本当だ…」
呆気にとられる女性芸人。

デイレクターは、その女性芸人の前に颯爽と出ると、サングラスをはずす。
「お久しぶりです。本城さん」

「あっ、オマエ。ポンタ…」
あんぐりと口をあける本城。

その女性ディレクターは、かつて本城裕二のマネージャーをしていたのだ。

ポンタとは、むかし本城が飼っていた犬の名前で、彼女の本名は白金葵という。
本城がかわいがっていた愛犬のように、まっすぐな性格で、ちょっとドジなところがあったので、本城からそのアダ名をつけられたのだ。

中年になった白金葵も、変わらず澄んだ瞳をしている。

「へぇ〜っ、オマエ、デイレクターやってんのか」
本城は、白金葵のまわりを値踏みをするようにジロジロとみながら一周する。

「ええ、まぁ…」
新人マネージャーだったころのように、無垢な恥じらいをみせる白金葵。
彼女は、密かに本城に恋心を抱いていたのだ。

ところが、昔と変わらず尊大な口調でケチをつける本城。
「しかしオマエの拾う仕事は相変わらずクソだな」

「えっ…」
眉根を寄せて、ムッとする白金葵。

「オマエそんなくだらない番組をやっていて虚しくないか。ずいぶん、落ちぶれたもんだ」本城は白金葵の肩に腕をのせて言う。「仕方ない。オレのマネージャーとして、もう一度雇ってやる」

「本城さん」白金葵は苦笑して答える。「変わってませんね、そのビックマウス」

「当然だろ」鼻で笑い、本城は白金葵を人差し指で指さす。「オマエも、小さくまとまんなよ。ハア!」

〈終わり〉

DVD化されておりませんが、ユーチューブでひろった動画はコチラです。

さらばハードボイルドな人よ

「な、なんだこりゃ」
私は後輩からもらった卵の殻を叩いて仰天した。
ゆで卵だと思い込んでいたが、半熟の中身がドロ〜ッと出てきたのだ。

「温泉卵ですよ」
後輩は、何をそんなにびっくりする必要があるのかという表情で私を見る。

「オレは、そういう中途半端なものはきらいなんだ」私は温泉卵とやらを後輩に返す。「卵はハードボイルドに限る」

「美味しいのになぁ」
後輩は、私の返した温泉卵を弁当の上で割って落とす。
そして、それを白飯といっしょに美味そうに食べる。

それを見ていたら、私はすっかり食欲を失った。
私は背広の内ポケットからマルボロを取り出し、食後の一服を始める。

「ち、ちょっと、真浪さん」
後ろから若い女の声がした。

私は振り返る。
同じ職場で働く、28歳のちょっとイケてる女性だ。

私はタバコをふかしながら答える。
「なんだ? 話があるのなら、ベッドの上で聞くぜ」

「ふざけないで下さい。それってセクハラですよ」
彼女は汚らわしいようなものを見るような目で私を睨み、ヒステリックな声をあげた。

どうやら本気で怒らせてしまったらしい。
まったくジョークも通じない。

「悪かった」と私は頭を下げた。「で、私に用があるのか?」

「用じゃないですよ」彼女はふくれっ面で答える。「ここ禁煙ですよ。あなたの吐く煙草の煙が漂ってきて、他の人、美味しく食事できないじゃないですか」

「えっ…」
周囲を見ると、みんな迷惑そうな表情をして私を見ている。

「それと、なんでバーボンなんて飲んでいるんですか」彼女は私の机の上にあるバーボンの瓶を指さす。「ここは酒場ではありません。職場ですよ。午後も仕事があるのに、いったいどういうつもりですか」

確かにこれはバーボンの瓶だ。
しかし中身は麦茶である。

麦茶のペットボトルではハードボイルドな雰囲気を醸し出せないので、バーボンの瓶に移しかえただけだ。
いくら私でも、会社でバーボンを飲むような非常識なことをしない。

そのことを彼女に説明しようとすると、彼女はすごい剣幕で私を遮った。
「言い訳はけっこうです。男らしくない。さっさとその瓶片付けて、営業にいったらどうですか」

私はため息をついて、バーボンの瓶を机の下に隠した。

まったくハードボイルドでいるのが難しい時代になったものだ。


台風ニモマケズ

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娘よ

「さぁ、今週もクイズで賞金ゲットの時間がやってまいりました」
いつも以上に元気な声で番組を始める私。
それもそうである。なぜなら今日の解答者は、私の愛する一人娘であるからだ。

娘は、まだ18歳。
親の欲目かもしれないが、妻に似てかなりかわいい。

その容姿を買われ、ついこないだ芸能界デビューをした。
私の娘ということで、けっこうな注目を浴びている。

そしてついに私が司会をつとめる、この番組に呼ばれたというわけだ。

しかし私は少々心配している。
娘は、あまり勉強が好きではないからだ。

トンチンカンな解答をして、おバカタレントの仲間入りをしてしまわないだろうか…。
娘が馬鹿にされるのを見るのは、親として忍びない。
いや、絶対に嫌である。

「でも、容赦をしないでくださいよ」
アシスタントの女子アナは、そんな親心を知らず、ふざけたジョークを飛ばす。

「と、当然ですよ。芸能界の厳しさを、教えてやりますよ」
私は憤怒の気持ちを押し隠した笑顔で返し、解答席に座る娘を一瞥する。

娘は心細そうな表情で、落ち着きなく視線を泳がせている。
長年この番組をつとめている者の勘として、こういう表情の解答者は、無残なまでに完敗するのだ。

参ったなあ…、と思いながら、私は出題ジャンルカードをひく。

どうか娘の得意なジャンルのカードが当たりますように…。

恐る恐るひいたカードを見ると、美術のジャンルだった。

ヤバイ…。

娘は漫画は大好きであるが、絵画にはまったく興味が無い。
絵もド下手で、もらってくる成績はいつも1であった。

従って、ひいたカードのジャンルを告げると、娘は恨めしそうな表情で私を睨んだ。

しかしもう一度引きなおすわけにはいかないのだ。
わかっておくれ、オーマイリトルガール。

「それでは、まず第一問」私は明るさを装って、問題を読みあげる。「スペインの生まれで、『記憶の固執』などの作品を描いたシュールレアリスムの画家は誰でしょう?」

問題を聞いた娘は、瞬間凍結したように青い表情で固まった。

「さぁ、だりでしょう。だりかな〜ぁ」
私は娘を窮地から救うべく、ヒントをまぜて問いかける。
とくに「だり」の部分を強調して。

頼む、どうか伝わってくれ…。
私は娘を祈るような気持ちで見る。

その想いが伝わったのか、娘は私にむかって頷きながら、オズオズと答える。
「ダ、ダリ…」

「正解!」
私は、ファンの巨人軍が勝ったよりも大きな歓声をあげる。

しかし、これで終わりではない。

再び暗い気持ちで、次の問題を読みあげる。
「パリの生まれで、『草上の昼食』や『オランピア』などの作品を描いた画家は誰でしょう?」

また凍結する娘。

私はヒントを与えようと知恵をしぼり、出題席の上にあった黒マジックペンを鼻の下に当て、もう片方の手でオデコをあげてみせる。

「何してるんですか?」
すかさず、隣にいるアシスタントの女子アナが尋ねる。

「谷村新司のマネですよ、マネ」
私は娘のほうに目配せをしながら答える。

そのヒントもうまく伝わったようで、娘は「マネ」と答える。

その後も、娘は私の出すヒントを読み取って、正解をつづけた。

そしてついに最後の一問となった。

最後の問題の解答は、ゴッホであった。
私は、自然な感じで咳をして、娘にヒントを与える。

娘は頷き、答えた。
「コッホ」

「ざ、残念!」
天を仰ぐ私。

娘よ。
コッホは「近代細菌学の開祖」といわれる細菌学者なのだよ。

ホウレンソウ

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オルセー美術館展所感

昨日は、六本木ヒルズにほど近い国立新美術館で開催されている「オルセー美術館展」に行って参りました。

オルセー美術館といえば、印象派を中心に名画が揃えられ、年間の来場者数は350万人以上に及ぶといわれる、花の都パリの観光名所です。

連休中日とあって、ものすごい混雑でした。
ブルトーザーでガーッとおしていきたいほどの大渋滞。

4コマでその様子を語ればこんな感じです。

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みなさんもよくご存知の名画といえば、たとえばこんなものがありました。

エドゥアール・マネの『笛を吹く少年』

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ホイスラーの『灰色と黒のアレンジメント第一番』

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ミレーの『晩鐘』もありました。

そのほか、モネやセザンヌ、ドガ、ルノアールなど、巨匠の名画があり、その存在感に圧倒されました。

しかし、ボクがとくに感銘を受けたのは、あまり馴染みのない作家の作品でした。

一番のお気に入りはこれです。

ジュール・ブルトンの『落ち葉拾いの女たちの招集』

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驚くほどの画力で、日暮れまで重労働を課せられる女性たちの悲哀を、哀愁あふれる夕焼けを背景に描いており、胸打たれました。

それともう一点は、ジャン=レオン・ジェロームの『エルサレム』です。

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注目していただきたいのは、右下に描かれている影。
十字架に磔にされたキリストの影です。
影でこの悲劇を描く発想力に、感服しました。

他の人達もそうだったようで、これらの絵の前がいちばん渋滞しておりました。

意外にも流れがスムーズだったのは、印象派の絵の前。
教科書にも載るほどの名画ばかりであったのにもかかわらず、じっくり見る人は少なかったです。

ボクも、ま、こんなもんか、程度の印象しか受けませんでした(そういう意味での印象派か…)。
発表当時、あまり評価されなかったのも、その前に並べられたアカデミズムの作品をみるとわかるような気がします。

同展は、10月20日まで開催されております。
パリに行かなければみられない名画ばかりですので、興味のある方はぜひ足をお運び下さい。

戦闘態勢開始

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じわ〜っとくる

じわ〜とくる+のコピー_convert_20141010222007

妻の口撃

「ちょっと、これナニ」妻は仕事から疲れて帰ってきた俺の眼前に、昨日着た覚えのあるワイシャツを突き出す。「胸のポケットのところを見なさいよ。口紅がついているのよ。あなた浮気しているでしょ」

俺は驚いて、妻の指摘するその箇所を凝視する。
確かに、薄っすらと口紅の跡らしきものがある。

恐らく、満員電車にゆられて帰宅する途上で、目の前にいたOLの口がついたのだろう。
それに気づかず、汗ばんだワイシャツを洗濯カゴに放り込んだけの話だ。
完全な濡れ衣である。

俺はその憶測を話し、馬鹿も休み休み言えと笑い飛ばした。

しかし妻は疑いの目を解かない。
「そんな言い訳、信じると思う? 浮気をしている人間の言う常套文句よ。馬鹿」

「常套文句って言われてもなぁ。それが真実なんだもの」
俺は事を穏便に済まそうと、優しく答える。

しかしそれが裏目に出たらしい。
妻は「妙に優しいところが怪しいわ」と悪く受け取る。
疑惑の念を深めさせる結果になってしまった。

「じゃあ、半ギレして答えたほうがいいのか」
疲れて帰ってきているのに、なんでこんな拷問を受けなければならないのかと、俺はだんだん腹が立ってきた。

そんな気色ばんだ俺の顔を見て、妻は歪んだ笑みを浮かべる。
「ほら本性を現したわ。痛いところをつかれると、人間は怒鳴ってもみ消そうとするものよ。伊達に大学で心理学を学んだわけじゃないわ。アタシを騙せると思って。馬鹿」

「弱ったなぁ」
俺は腕を組んで唸る。

妻と結婚して3年が経つが、彼女の嫉妬深さには少々疲れ始めている。
キュートな外見に惚れて求婚したのだが、内面がこれほど神経質だとは思ってもみなかった。

「どうしたのよ、もう言い訳できないの。馬鹿」
妻はそう言うと、俺の顔にワイシャツをなげつけた。

「なにすんだよ」俺はワイシャツを投げ返す。そしてついに堪忍袋の緒が切れて怒鳴った。「おとなしく聞いていれば、なんだ。合間合間に、馬鹿、馬鹿って。いくらなんでも、言い過ぎだぞ」

「アラ」妻は動ぜぬ表情で返した。「アナタの言ったことをしたまでよ」

「なんだって、俺が何を言った?」

「忘れたの」妻は鼻で笑って答えた。「馬鹿も休み休み言えと、アナタ言ったじゃない」


マキノ一座の挑戦

それは私が映画を観ていた時だった。
隣の席に座るふたりの男性が、映画のエンディング曲が流れている最中、こんな会話を交わしていた。

「オヤジ、これじゃ、ウチラのような昔ながらの芝居は勝ち目はねえぜ」
40代くらいの男性が、ため息混じりに言った。

「う〜む、確かに…。オレは度肝を抜かれたぜ」オヤジと呼ばれる70代くらいの男性が、ため息とも感心の唸りともつかぬ声をあげる。「何十年ぶりに映画をみたが、最近の役者はえらい運動神経がいいじゃないか。天に舞うように飛び跳ねるし、トンボを切りながら空中キックをする。エノケンだってあんな真似はできねぇ。役者やるより、オリンピックに出たほうがいいんじゃねえのかい」

「馬鹿だなぁ、オヤジ」40代男性は呆れ声を出す。「あれはワイヤーアクションってやつだ。要するに、ワイヤーロープで役者の体を吊ってるの。だからあれだけ高く飛べるんだよ」

「そうなのか、しかしロープは見えなかったぞ」

「それは映像技術で消しているんだよ」

「そんなこともできるのか…」

「そうだよ。最近の映像技術はえれえ進んでいるんだ」
40代の男性はそう言うと、70代の男性のほうにバッと顔を突きだした。

「うわっ! いきなり何しやがんだい」70代の男性は、私の座席まで振動が伝わるぐらいに大きく背をのけぞらした。「オレは心臓が悪いんだよ。馬鹿な冗談はよしてくれ」

「おどかしてゴメンよ」40代の男性は、驚きで荒い息を吐く70代の男性の背中をさする。「でも、最近の映画じゃ、こんな感じで映像が飛び出してくるものがあるんだ」

「ほ、本当か」

「ああ、3Dというやつだ」

「スリでえねぇ、それで観客のハートを盗むってわけか。うちも負けてはいられねぇや」70代の男性はそう言うと、いきなり手をたたいた。「よし決めた。うちらもその技術を盗んで、お客様の度肝を抜いてやろうぜ」

「盗むって、どうやって」

「体に縄をつけて観客席のほうまで飛び回ってみせるのよ」70代の男性は威勢のいい声をあげ、腕をめくってみせる。「これで清水次郎長親分の富士川の戦いをやってみろ。それは壮大なものになるぜ」

「なるほど、そいつはおもしれえ」40代の男性は大きく相槌を打った。「そいつをやりゃぁ、マキノ一座の名があがるにちげえねえぜ、オヤジ」

ワイヤーアクションを取り入れた芝居など今さら珍しくもないと思いつつも、この時代遅れの一座がどんな芝居を見せてくれるのか、私は興味を覚えた。

次の日曜、さっそく私はマキノ一座の芝居小屋に足を運んだ。
しかし芝居小屋の戸口には、「都合により、しばらく休ましてもらいます」と書かれた紙が張ってあった。

私は、芝居小屋のとなりのタバコ屋でタバコを購入するついでに、タバコ屋のばあさんに休演の理由を聞いてみた。

すると、ばあさんは、こう答えた。
「何でも、芝居の稽古をしている最中、この一座の親子が大怪我をしたらしんだよ。あんときは、救急車がきて大騒ぎだったよ」


観客席を飛び越えて、芝居小屋の外まで救急車へと運ばれたか。
それはさぞ度肝を抜かれる光景だったろうな…。

あの親子の演ずる次郎長富士、観られる日が来るのだろうか。

偉人に学べ

「オーイ、健太。ちょっとこっちに来なさい」

ボクが家の前の道路でリフティングの練習をやっていると、庭の方からパパの呼ぶ声がした。
怒っている様子の声だ。
あれがバレたかと思い、ボクは心臓がドキドキした。

恐る恐る呼ばれた方に行くと、案の定、パパは庭に植わった桜の前で仁王立ちしていた。

「この桜の木の枝を折ったのはお前か?」

「えっ…」
パパは怒るととても恐いので、ボクは首を縦に振る勇気がない。

「違うのか?」パパはさらに語気を強める。「お前じゃなければ、昨日の台風のせいか?」

「そうかも…」
ウソをつくのは悪いと思いながらも、爆発寸前のパパの顔を見ると、ボクは責任転嫁をせずにはいられなかった。

「お前は、ボストンの話を知っているか?」

「えっ、知らない」

「小学校で先生教えてくれないのか。アメリカ合衆国建国の父と呼ばれる人だ」パパは物知り顔で言う。「その人は、桜の木を切ったことを正直にお父さんに言ったんだぞ。偉くなる人は、ウソはつかないんだ」

それはワシントンだろ!
ツッコミを入れたかったが、下手なことを言えば火に油を注ぐことになるので、黙ってうつむく。
しかし笑いがこみ上げてきてとまらない。

「人が説教をしているのに、なにニヤニヤしているんだ!」
パパのカミナリが落ちた。

これ以上怒らせたらマズイ。
正直に認めよう。

ボクはクスクスという笑い声を、グスグスという泣き声にかえ、顔をおおって「ごめんなさい」と言った。

「ようやく認めたか」パパはボクのお尻を平手打ちした。「なんで正直に言わなかったんだ。パパ悲しいぞ。そんなんじゃ、ボストンみたいに偉い人になれないじゃないか」

「だって…」
ボクはパパだってワシントンの逸話から学んでないじゃないかと思いながらも、またお仕置きを受けるのが恐いので、その後を言えない。

「だって、何だ。正直なだけじゃなくって、うじうじして。男らしくない!」
パパは近所に響き渡るような怒声をあげた。

そうやってすぐ怒るから、正直に言えないんじゃないか。
パパこそ、正直に言って褒めたワシントンのパパに学んでもらいたい。

うっかりな人

うっかりな人+のコピー_convert_20141005162247


エコの鬼

「おい、車で行かないのか?」
転居したという友人に招かれたオレは、その友人に尋ねる。

「車なんて売っちまったよ。エコじゃないかな」と友人は答える。「転居先も、会社から2キロぐらいだ。歩いても知れている。健康増進も考えて、そこを選んだんだ」

友人とは会社の同期で、もう15年の付き合いになる。
お互いにいまだ独身。
結婚適齢期を過ぎ始めており、ちょっと焦り始めている。

数少なくなった独身仲間である彼が転居をしたと聞いて、オレはもしや彼にいい相手でも見つかったのではないかと憶測し、ヒヤヒヤしている。

しかし彼は「違うよ」と笑った。「エコな生活をしたくて、転居しただけさ」

「エコだなんて、なんでまた急に」
オレは彼の心境の変化に驚いたが、そういえば最近、彼はちょっと変わったなと感じていたところだ。

例えば、昼飯を外食から弁当にかえたこと(ま、大抵は不細工なおにぎりなのだが…)。

飲み会に行く回数も減った。
行っても、二次会までは付き合わない。

そういうことからも、彼に彼女ができたのではないかとオレは疑っていたのだ。
しかし取り残されるという現実をつきつけられるのが怖くて、その話題に触れることはできなかった。

しかしそれが杞憂であることを知って、オレはホッとした。
転居先に招かれたのは、フィアンセを紹介するためではなかったというわけだ。

気が楽になって、くだらないことを喋りながら歩いているうちに、彼の転居先についた。
そのアパートは、前のアパートよりも、さらにグレードが落ちた物件だった。

アパートの前も広大な墓地が広がっており、あまりいい眺めではない。

「でも、日当たりは最高だぜ」と彼は鍵を開けながら言った。「ほら、前のアパートは東向きだっただろ。午後は陽が陰って寒かったけど、このアパートは南向きだからそんなことはない。それに手前に日差しを遮る高い建物はないから、よく陽が当たるんだ。それだけでも、ずいぶんエコだぜ」

なるほど、そういう理由からここを選んだのか…。
しかし怖がりのオレは、墓地を頭に寝るなんて御免である。

「オレだって最初は嫌だったよ。でも、慣れれば、どうってことないさ」
彼はそう言うと、オレを室内に招いた。

玄関のわきにトイレと風呂場があり、その先に小さな台所と居間があった。
その隣には、寝室があると彼は言った。

着座を勧められた居間には大きな窓があったが、午後4時をまわっていたので、だいぶ日差しが弱くなっていた。
すこしでも日差しを強めようと、彼はレースのカーテンをあける。

が、外は、陰気な墓地の光景だ。
カラスの大群が、墓地の大木に群がっているのも、薄気味悪かった。

「楽しくない光景だな。厚手のカーテンを閉めて、照明をつけようぜ」と、オレは注文する。

しかし彼は、「まだこんなに明るいじゃないか。エコを考えろよ」と受け付けない。

そして台所に行き、コーヒーを淹れてきた。
オレはそれに口をつける。

「薄っ!」
超アメリカンなコーヒーの味に驚く。
それにやけにぬるい。

「朝沸かしたお湯を魔法瓶に入れといたものだからな、多少はぬるいかもしれん。でも温め直せば、電気をつかうことになるんだ。そんなのエコじゃない」
そう言うと、彼は実にうまそうな表情をしてコーヒーをすする。
これも慣れなのか…。

安普請のアパートは、隙間風がどこかから入ってきた。

金木犀の香りが漂う今時分は、夕方になると急激に温度が下がる。
その香りを運んでくる秋風に、オレは震えた。
「これじゃ南向きでも、あんまり意味ないんじゃないか」

「いや、精神力だよ」と平気な顔で答える友人。「寒さに耐えれば、体も強くなる」

馬鹿を言うな!
オレは尿意をもよおしてきた。精神力では、尿意は抑えられない。

オレは耐えられなくなり、立ちあがる。
「ちょっと、トイレ借りるぞ」

彼はトイレに向かうオレの背中に声をかけた。
「どうぞ、でもトイレの水を流すなよ。エコじゃないから」

「えっ…」
便座の蓋をあけると、さっき飲んだコーヒーより濃い色の尿がたまっていた。

呆然としているオレの耳に、彼の声が聞こえてくる。
「大をするまで、流さないようにしているんだ」

オレは座って用をする気にならず、目をつぶって立ちションベンをした。

「おまえ、エコにもほどがあるぞ」
居間に戻ったオレは呆れ返って、友人に文句を言った。

「いやいや、あんなのまだ序の口」
笑って手を振る友人。

「まさか、おまえ、風呂の水も同じの一週間ぐらい使っているんじゃないだろうな」

「使っているよ」
真顔で答える友人。
オレは体が凍えて仕方なかったが、凍死しても彼から風呂を借りるまいと思った。

しかしその気持ちに反して、鼻水がズルズルでてくる。

オレは鼻すすりながら、「ティッシュ貸してくれ」と催促する。

「ほらよ」
彼はポケットから折りたたんだティッシュを取り出す。

それを受け取ると、なんだか湿っている。
「まさか…」

「そうだよ。オレが使ったの」と答える友人。「まだ一回しか使っていないから、大丈夫だ」

「いやだ、こんなの」
オレは投げるようにティッシュを返して、テーブルに置いてある新聞紙を拾う。
そしてそれを鼻紙がわりに使おうとすると、彼は大声で制した。
「それはトイレットペーパーの代わりに使うんだから、ダメ!」

どこまでエコなんだ。
おまえは、エコの鬼だ。
いや、それを通り越して、エコエコアザラクだ!

「とにかく、寒くてたまらん。暖房をつけてくれ」
オレは仕方なくハンカチを取り出して、それで鼻を拭きながら頼む。

「風邪をひかれても困るからな。じゃぁ、暖をとるか」
彼は立ち上がると、隣の部屋の襖をあけた。

そこには、シングルの和寝具がひいてあった。
「さぁ、一緒に寝て体を温め合おう」

そんなことをするくらいなら、墓石を抱いて寝るほうがマシだ!
オレは逃げるように立ちあがると、外へ飛び出した。

見習いなさい

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プロフィール

マウントエレファント

Author:マウントエレファント
アルパカとバラとスプリング、つまり春(おまえはルー大柴か)を愛するナイスミドル?なサラリーマンです。でも同僚には、そんな趣味、ばらしません。キモイっていわれますから。残念!(古っ!)

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