スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

老婆の訓示

徳川家康の遺訓に「人の一生は、重荷を背負うて遠き道を行くが如し」というのがあるが、オレは重荷を背負い続けて生きることに疲れ、三連休のときを利用して一人旅に出た。

旅先のあてはない。
ただ、都会の喧噪からのがれ、気の向くまま、のんびりと時間が流れる田舎にでも行ってみようと考えているだけだ。

一刻も早く都会から離れたいと新幹線に飛び乗り、それから先は鈍行を乗り継ぎ、ついには無人の寂れた田舎の駅にたどり着いた。

見事なほどに、周囲にはなにもない。
山間に畑が広がり、古い民家がちょこちょこあるだけの、いわゆる過疎地だ。

ここに降りたはいいが、宿もなさそうだ。
コンビニすらなく、どうやって一夜を明かそうか…。
オレは心細くなってきた。

重荷を背負うのに疲れたので、近所に散歩にいくような身軽な格好できた。
食料はおろか、着替えもない。
ここまできて、なんて無謀なことをしてしまったのかと、オレは後悔し始めた。

しかし、ここで引き返してもつまらない。
一日二日、不便な生活を送っても死ぬわけではないと開き直って、オレはつま先を駅の出口のほうに向けた。

すると、その先に行商のように大きな荷物を背負った80歳ぐらいの腰の曲がった老婆がいた。

荷物を背負うのに苦労しているようだったので、オレは手伝ってやった。

「兄ちゃん、あんがとな」と、老婆は深いしわの刻まれた顔をほころばせて感謝を述べた。

「いえいえ、とんでもない」とオレは答え、どこまでその老体でこんなに重い荷物を背負っていくのか心配になって訊いた。「家は近いんですか?」

「家かい?」老婆は聞き返すと、山のふもとの一軒家を指さした。「あそこだよ」

「えっ、あんな遠いところまで、この荷物を背負っていくんですか?」

「そうだよ」
老婆は平然と答えた。

「大丈夫ですか?」
オレは、何ならかわって荷物を背負ってやる覚悟で訊いた。

すると、老婆は「大丈夫。慣れているから」と答え、二、三歩あるいてみせると、よっこらしょと荷物を降ろして笑った。「疲れたら、こうやって荷物を降ろせばいいんだもの。そんなことを繰り返していれば、知らぬ間に家に着いちゃうよ」

オレは、その何気ない言葉に、ハッと気づかされた。

四六時中、ずっと重い荷物を背負うような不器用な生活を続けてきたから、オレは無駄に疲れてきたのだと…。

そんな当たり前のことが気がつかなかったのかと思うと、オレの背中からふっと重荷がおりたような気がした。
スポンサーサイト

comment

管理者にだけ表示を許可する

05 | 2017/06 | 07
Su Mo Tu We Th Fr Sa
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
プロフィール

マウントエレファント

Author:マウントエレファント
アルパカとバラとスプリング、つまり春(おまえはルー大柴か)を愛するナイスミドル?なサラリーマンです。でも同僚には、そんな趣味、ばらしません。キモイっていわれますから。残念!(古っ!)

にほんブログ村
ランキングに参加しています。投票していただけると励みになります。
ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村 にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
にほんブログ村 にほんブログ村 イラストブログ 挿絵へ
にほんブログ村 にほんブログ村 漫画ブログ 4コマ漫画へ
にほんブログ村
人気ブログランキング
ランキングに参加しています。投票していただけると励みになります。
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
小説・文学
321位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
SF
2位
アクセスランキングを見る>>
最新記事
カテゴリ
英検準1級単語ドリル 黒猫版
日々の努力が実を結ぶ

計算×50
頭の体操にどうぞ
名言
不安な明日も先人の励ましで乗りきりましょう

地球の名言 -名言集-

最新コメント
お気軽にコメントをどうぞ
月別アーカイブ
アクセスカウンター
リンク
リンクフリーです
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
QRコード
QR
RSSリンクの表示
最新トラックバック
カテゴリ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。