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てっぺんの景色

「お父さん。もう疲れたよ」
後ろからついてくる10歳になる息子が、息切れをしながら弱音を吐く。

「まだ、中腹じゃないか。頑張れ!」
私は息子の後ろに回り、彼のお尻を押しあげる。

「もう、ここで充分だよ」息子は私にむけてふり返った視線を、外界の広範囲に這わす。「ほら、景色もきれいだし」

しかし「まだまだ」と私は息子の尻を叩く。「てっぺんに行けば、もっといい景色が見られるぞ」

私は、登山を通じて息子に人生を教えたいと思っていた。

私の敬愛する精神科医でエッセイストの斉藤茂太氏は、人生を「山登り」にたとえてこんなことを言っていた。
上がれば上がるほど息切れをするが、それに比例して視野は広がる。そして、てっぺんに到達すれば、絶景を眺めることができると。

私は折れそうになったとき、この教えに何度も励まされたきた。
それを実体験を通して、息子にもぜひ味わってもらいたいと思ったのだ。

だから、ここで諦めさせるわけにはいかない。
私は、ここで息子を一休みさせると、何とか説得し、登山を再開させた。

その後、息子は何度もくじけそうになったが、その度毎、私は説得をし、ついに彼を山のてっぺんに連れていくことができた。

「どうだ、やり遂げた気分は。爽快だろう」
私は、汗でびっしょりになった息子の肩に手を回した。

しかし息子は首をふって、不満をもらした。
「ちっとも爽快じゃないよ。てっぺんに登ったらいい景色が見られるって言ったけど、曇っていて全然きれいじゃないし」

確かに息子の言う通りだった。
山の天候は変わりやすく、厚い雲が下界を覆っている。
今にも雨が降り出しそうで、ここでゆっくり過ごしている場合じゃなさそうだ。

「下山するぞ。急げ」
かえって悪い体験をさせてしまったという後悔の念に苛まれながら、私はパンパンにはった足を下界にむけた。
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アルパカとバラとスプリング、つまり春(おまえはルー大柴か)を愛するナイスミドル?なサラリーマンです。でも同僚には、そんな趣味、ばらしません。キモイっていわれますから。残念!(古っ!)

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