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破滅の愛

洞穴のように薄暗い6畳の部屋の厚いカーテンの隙間から、真夏の夕日が差し込む。
その日差しはちょうど俺の眼のあたりに当たっているが、意識が朦朧としているせいか、蜃気楼のように揺らいで見える。

「イテテテッ」
恐らく悪性腫瘍によるものと思われる激痛で、下腹部がえぐられるように痛む。

こんな状態がもう二ヶ月も続いている。
俺は骸骨のように痩せ、もはや自力で立つことはできない。
明日は朝陽を拝めるのかわからないような状態だ。

「兄さん、しっかりしろ」
3歳年下の弟が俺の体を揺する。

あの頃、弟は長髪の美青年だったが、今では頭頂部が薄くなり、すっかり初老の男だ。
ずいぶん二人で頑張ったものだと思う。

しかし俺はもういけない。
病気では、どうしようもないのだ。
だから「俺はもうだめだ」と、弟に弱気なことを言ってしまった。

すると弟は、「何を言っているんだよ、兄さん。あともう少しで幸せになれるんじゃないか。ここでへたばったら、今までの苦労は無になってしまうんだぞ」と泣きじゃくりながら言った。

俺は弟に揺すられながら、時計に目をやる。
俺の目尻からも涙がながれる。

悔しいのは俺も同じだ。
せっかくここまで頑張ったのに…。

しかしこうなってしまえば、どうにもできない。
世の中そんなに甘くないと思うしかない。

俺は苦しい息の下で言った。
「お前は幸せになってくれ。俺の分も」

「嫌だよ、そんなの!」弟は叫んで押入れの襖を開くと、そこに隠してあるタイムマシンに乗り込んだ。「待っていろ、兄さん。病気が悪くなる前のころにタイムスリップして、お医者さんに手術してもらってくるから」

「やめろ、そんなことをしたら…」
俺は病身の余力を振りしぼって声をあげたが、弟には届かず、弟とタイムマシンは押入れから消えた。

しばらくすると、弟の試みは成功したのか、俺の体に生気が蘇ってきた。
でも、俺は喜べなかった。
その成功は破滅への扉を開けるリスクもはらんでいるからだ。

俺は一刻も早くこの部屋から逃げようと立ち上がった。
その時だった。

ボロアパートのドアを強くノックする音がした。
窓の外にも、人の気配がする。
どうやら俺は包囲されているようだ。

だから病院にかかるのを避けていたのだ。
病院にいけば身元がバレる。

クソ、あと6時間で時効になったのに…。
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アルパカとバラとスプリング、つまり春(おまえはルー大柴か)を愛するナイスミドル?なサラリーマンです。でも同僚には、そんな趣味、ばらしません。キモイっていわれますから。残念!(古っ!)

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