スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

天国からのエール

土手のまっすぐに伸びた道に、真夏の夕日が眩しく反射している。
その強い光線を浴びる山々は、まるで高級絨毯のようになめらかな緑の肌をみせている。
空が広いので、噴煙のように巨大にもりあがった入道雲に圧倒される。
土手の下では広い川が紅色に染まり、ゆったりと流れている。

普段なら、私はこの美しい光景をスマホのカメラに収めただろう。
でも、今日の私は落ち込んでいる。
慕っていた上司が突然病に倒れ、その後任にあまり評判のよくない上司がつくことになったからだ。

その上司は、フケだらけの長髪で、土気色の顔に黒縁眼鏡をかけており、見るからに陰気だ。
性格も粘着質だという。
私の最も苦手とするタイプである。
新しい上司とうまくやっていかれるだろうかと思うと、陰鬱になった。

いっそのこと、翔ちゃんと結婚しちゃおうかなぁ。
そんな考えが頭をよぎる。

でも、アタシは翔ちゃんのことを本気で好きなのだろうか。
ただ惰性で付き合っているような気がする。
翔ちゃんは、子供っぽいし、短気なところがある。
そんな性格だから、いつ正社員になれるかわからない。
勤めが嫌だから結婚に逃げるような選択は、やっぱり間違っているような気がする。

私は気が滅入りすぎて、座り込みたい気分になる。
見ると、土手を下った木陰のところに、石を削った腰掛が見える。

そこで一休みしようと、滑らないように注意しながら雑草の生えた土手を降りる。

「ヒャ〜!!」
私は悲鳴をあげる。
アカシヤの木の下を潜ろうとしたら、顔に蜘蛛の巣がかかったのだ。

蜘蛛の巣を払いながら目を開けると、巣を壊された女郎蜘蛛が大慌てで這いあがっていくのが見えた。

女郎蜘蛛を眼で追いながら、私は幼い日のことを思い出した。

子供の頃、私は蜘蛛が大嫌いだった。
それを克服してくれたのは、私の大好きな祖父だった。

あの時も家の門の付近にできた女郎蜘蛛の巣が私の顔にかかった。
私が驚いて大騒ぎしていると、庭で水撒きをしていた祖父が飛んできた。

私が号泣している理由がわかってホッとした様子の祖父は、私の顔についた蜘蛛の巣を丁寧にとってくれながら言った。
「ホラ、泣かないでよく見てご覧。蜘蛛の巣が3重になっているのがわかるだろ。一番手前の網が、真ん中の網の蜘蛛のお家を守るためのもので、一番後ろの網はゴミ捨て場になっているんだぞ」

「ゴミ捨て場?」
私は涙を拭いながら、祖父の指差す別の女郎蜘蛛の巣を見あげた。
確かに一番後ろの網に虫の死骸が捨てられてあった。

「きれい好きなんだよ。蜘蛛さんは」祖父は優しく諭してくれた。「頭から嫌いだと思っていれば、何もそのものの良さは見えないんだぞ。嫌う前に、澄んだ眼でよく観察してみること。そうすれば、少しはそれに関心がもてるようになるんだよ」

「おじいちゃん…」私は今は亡き祖父のことを思い出し、西の夕焼け空を見あげる。「そうか、はじめから嫌っちゃ何も見えないんだものね。アタシ頑張ってみるよ」

そうつぶやくと、心に響かなかった美しい風景が、いつものように輝いて見えた。
スポンサーサイト

comment

管理者にだけ表示を許可する

No title

頑張ってくださいね。
苦手な人は、何処にでも居るものです。
しかし、人と合わないから、付き合えないから苦手だからとその場を去っていては何処にもお勤めなど出来ません。
仕事の付き合いの人、それ以上関心持つ事も乱される事もしたくない と思いたいですね。
仕事は文字通り「事に仕える」 人から仕事を言い渡されるので、人に仕えるように錯覚を起こしますが、あくまで事に仕えます。
役割分担で上司から仕事が振られてくるだけの事です。
人間関係などと、大袈裟に気にする必要など無いと思います。
しかし、わざわざ人に不愉快を与える必要も無いので、適当に乗り切りたいものですね。

いい話ですね。このまま短編映画にできそうです(^_^)

虫たちはだいたいきれい好きな気がします。きれいの方向性こそ違うものの、自分に適合しない微生物にでも寄生されたら最後、待っているのは死あるのみ、ですから……。

No title

ポール・ブリッツさん
コメントありがとうございます。

「100分 de 名著」で、ファーブルの話をやっていましたが、虫達の世界も実に感動的な話が多いです。
嫌っていてはもったいないですよね。

No title

ルレープさん
コメントありがとうございます。

そのとおりですね。
適当にスルーしないと身が持ちません。
「事に仕える」と思えば、少しは気が楽になります。
05 | 2017/06 | 07
Su Mo Tu We Th Fr Sa
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
プロフィール

マウントエレファント

Author:マウントエレファント
アルパカとバラとスプリング、つまり春(おまえはルー大柴か)を愛するナイスミドル?なサラリーマンです。でも同僚には、そんな趣味、ばらしません。キモイっていわれますから。残念!(古っ!)

にほんブログ村
ランキングに参加しています。投票していただけると励みになります。
ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村 にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
にほんブログ村 にほんブログ村 イラストブログ 挿絵へ
にほんブログ村 にほんブログ村 漫画ブログ 4コマ漫画へ
にほんブログ村
人気ブログランキング
ランキングに参加しています。投票していただけると励みになります。
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
小説・文学
321位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
SF
2位
アクセスランキングを見る>>
最新記事
カテゴリ
英検準1級単語ドリル 黒猫版
日々の努力が実を結ぶ

計算×50
頭の体操にどうぞ
名言
不安な明日も先人の励ましで乗りきりましょう

地球の名言 -名言集-

最新コメント
お気軽にコメントをどうぞ
月別アーカイブ
アクセスカウンター
リンク
リンクフリーです
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
QRコード
QR
RSSリンクの表示
最新トラックバック
カテゴリ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。