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その後の透明人間

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「目を覚まされましたね」
目を開けると、二重まぶたの大きな目がオレを見つめていた。

「ここはどこ?」
オレは体を起こそうとする。
しかし体中に激痛が走り、首を動かすのすら辛い。

「病院ですよ」
二重まぶたの女性は、若い看護婦だった。

そうか、オレは助かったんだ…。
宇宙人から奪った透明になれる薬を飲んで、元勤めていた会社に忍び込み、現金を盗んでやろうと向かっていた最中に、クルマにはねられたことを思い出した。

「九死に一生を得ましたね」枕元にスーツを着た、ゴツイ顔の中年男性が現れた。「頭部には損傷を負わなかったのが、幸いでした」

「そうですか…」
確かに、記憶ははっきりしているし、頭の動きも鈍く感じられない。
首から下は重体のようだが、それも時間がたてば回復するだろう。
強運に恵まれたといえよう。

「いや、幸いだったのかどうか」
しかし男は前言を否定するようなことを言った。

「どういうことですか?」
顔からサーッと血の気がひくのを感じた。
オレの身体は、もう元に戻らないというのか…。

「さっそくですが、いろいろお伺いしたいことがあります」男は上着の裏ポケットから手帳のようなものを取りだした。「私、警察の者です」

「警察…」
血の気のひいた顔が強張っていく。

「そうです、刑事課の者です」刑事は厳しい面持ちでオレに尋問をはじめる。「ところで、何であなたは全裸だったのですか?」

「そ、それは…」本当のことを言えないオレは返答に困り、とっさに顔を歪めて演技する。「ダ、ダメだ、思い出せない。事故の後遺症かもしれない」

「下手な芝居をしなさんな」刑事は鼻で笑う。そして横に顔をむける。「まったく弱ったもんだ。隣の患者さんも、訳の分からないことを言うし」

「隣の患者?」
オレは刑事が顔をむける右側に顔を傾けようとしたが、首が回らない。
仕方がないので目の端まで視線を動かすと、ベッドに仰向けに寝る茶髪頭が見えた。

「あちらの方は、あなたをクルマではねた加害者ですよ」と刑事は言った。「しかし、何も見えなかったと言うんですよ。いきなりクルマが何かにぶつかって、クルマが大破しただなんて。そんなの信じられます? 怪奇現象ですよ。とても調書に書ける内容ではない」

「はぁ…」
オレは、ますます返答に窮する。

すると、隣から絶叫するような声があがった。
「本当だ、オレは透明人間を轢いたんだ!」

「馬鹿なことを言うな!」刑事はそれを上回る大声で返す。「お前が轢いたのは透明人間じゃない。変質者だ」

「へ、変質者…」
いきなり変質者呼ばわりされたことに、オレは驚く。

「そうですよ」刑事は鋭い眼光でオレを見る。「最近、あの近辺では、露出狂の男がよく現れるという情報が寄せられておりましてね。年格好もあなたにぴったりなんですよ」

「ひ、人違いです!」
オレは動かない首を必死で振って否定する。

「じゃ、何でお前は全裸でうろついていたんだ?」
刑事はドスのきいた声で言う。

「そ、それは、宇宙人に全裸にされて、変な薬を飲まされたからなんです」
そう話を加工するしか言い訳が見つからなかった。

「宇宙人?」
刑事はあ然とした顔をする。

「そ、そうなんです、信じがたい話に聞こえるかもしれませんが、本当なんです」
オレは信用してもらうために、真剣な眼差しをつくる。

「そうか!」隣のベッドから明るい声があがった。「あんたは、その宇宙人に透明人間になる薬を飲まされたんだ。それで全裸で夜の街をさ迷い歩いていたってわけだ」

「そ、そうなんだ」
オレは加害者と意気投合した。

「なるほど…」刑事は深い溜息をついて尋ねてきた。「で、その宇宙人とやらは、どこにいるんだ?」

「じ、じた…」
自宅です、と答えかけて、オレは慌てて口をつぐんだ。

自宅には、オレに縄で縛られた宇宙人がいる。
刑事がそこに行けば、宇宙人から真実を暴露されてしまう。
そうなれば、オレは終わりだ。

「え、どこにいるんだ」
刑事は髭面をオレに近づけて解答を迫る。

「わかりません」オレは生唾を飲んで声を絞り出す。「薬を飲まされてから、いっさい記憶を失ってしまったので…」

「おまえら…」刑事はものすごい形相で、交互のベッドを睨むと怒鳴った。「嘘をつくなら、もっとマシな嘘をつけ!」
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トワイライトゾーンの、

「化け物が飛行機のエンジンを壊しているんだ!」

を思い出しました。なぜか(^_^;)

いったい最後にどういうオチをつけるのか楽しみです♪

No title

ポール・ブリッツ さん
さっそくコメントありがとうございます。

悲劇は喜劇に似ている、そんな話にしたくて書きました。
まともな人間から見れば、どっちもアホかと言いたくなりますよね。

からかってる様にしか見えんわな

刑事さん、あなたはまともだよ。安心して良い。でも世の中は狂っとるからなぁ(笑い

No title

miss.keyさん
コメントありがとうございます。

こんな話をまともにとったら刑事も狂ったのかと言われてしまいますね。
さてどうこの件を解決するのやら。

続編ありがとうございます

続きが読めるとは(^o^)

そして、完全ににっちもさっちもいかなくなっていますね(笑)

まあ、路上で全裸で発見されたら(脱いだ服も周りにないわけだし)、変質者扱いされますな。

刑事さんも大変ですね。「宇宙人」とか報告書に書くわけにもいかないだろうし。
せめて、他の変質者の罪をかぶらされることだけは避けられるといいですね。

No title

椿さんのコメントから、続編を書きました。
ありえない話に翻弄される刑事の姿を想像すると面白くなりそうで。
永遠に解決されない事故になりそうですね。

No title

天才だあ!!

楽しい!面白い!

警察勤めの出来る刑事さんの調書・・・

どうなるんだろ???

No title

Gさん
コメントありがとうございます。

そんなに褒めて頂いて恐縮です。
ふたりとも違う薬でもやって変になっているということで片付けられてしまうんでしょうかね。
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アルパカとバラとスプリング、つまり春(おまえはルー大柴か)を愛するナイスミドル?なサラリーマンです。でも同僚には、そんな趣味、ばらしません。キモイっていわれますから。残念!(古っ!)

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