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再びの卒業式 2/4

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沙織は、野球部のマネージャを務めていた。
高校一年の頃からだから、もう三年の付き合いになる。

付き合いといっても、オレの彼女というわけではない。
て言うか、女として意識したことはない。

世話焼きで口うるさいし、年がら年中、庇もないグランドでお天道さんの日差しを浴びているわけだから、俺達と同様、顔も真っ黒だ。
それにいつもジャージ姿。色気もクソもない。
これじゃ、誰も恋愛感情を抱くわけがない。

て言うか、恋愛感情を抱いている暇もなかった。
それは沙織も同じだったろう。
沙織も俺達野球部員も、甲子園を目指して、汗まみれで練習に明け暮れていたのだから。

その努力はなんだったのか…。
オレの高校時代は、いや、野球を始めた小学二年生からのオレの人生は、徒労に終わったことになる。

花の咲く前に折られるのなら、みんなと同じようにもっと勉強して、それなりの会社や大学に入れるようにしとけばよかった…。
オレはそう、猛烈に後悔した。

「後悔ばかりしていたって仕方ないでしょ」沙織はえくぼのある頬をふくらませた。「しっかり前を向いて歩かないと、もっと中途半端な人生を送るようになるわよ」

相変わらずのおせっかい野郎だ。
オレはムッときて、オレを見あげる沙織のオデコにデコピンをした。
「お前だって、進路決まってないんだろ。人のことより自分のことを心配しろ」

「痛っ…」
沙織はオデコを両手で擦った。
そしてその手を目の位置におろし、しばらく顔をあげなかった。

「おい、どうしたんだよ。そんな痛かったか…」
オレは心配になって、小刻みに揺れる沙織の痩せた肩に両手を置いた。

すると、花の咲くように両手を開き、「ばぁ〜!」と言って、沙織は笑顔をあげてみせた。

オレはカーッと熱いものが顔にあがってきた。
それは怒りによるものばかりではなかった。

息がかかるくらいの近距離にある沙織の顔が別人のように見えたからだ。
オレと同じように部活から遠ざかった沙織は、もう真っ黒に日焼けした顔ではなかった。
まるで秋桜のような透き通る白い肌をしていた。



沙織は覗きこむようにオレの顔を見て、首を傾げる。
「何、どうしたの?」
揺れた髪から、フルーツのような甘い香りが漂ってきた。

「な、なんでもねえよ」オレは沙織を振り払うように手をどけると、学校とは逆方向に背を向けた。「とにかく、オレはいかねえから」

「だったら、私もいかない」

「な、なに」
オレは仰天して、再び振り返る。

「だから、つきあうって言っているの。あなたに」

「そう言えば、オレが行くと思ってるんだろ」

「思ってないわよ、あなたは一度決めたら引かないもの」

沙織の大きな瞳は据わっていた。
劣勢な試合で弱気になったときに、オレに喝をいれたときと同じ眼力がその瞳に宿っていた。

手に負えないな、とオレは思った。
コイツの意志の強さは、横綱級だからだ。

オレはため息混じりに「勝手にしろ」と言うと、駅に向かって歩き始めた。
所持金のあるかぎり、遠くへ行ってみたかったからだ。

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こんばんわ

ワーイヽ(゚∀゚)メ(゚∀゚)メ(゚∀゚)ノワーイ
青い!!
白い!!

青春のキラメキだーい( ✧Д✧) カッ!!

尾崎の時代はもう戻ってこないけれど、今どきの子たちもちゃんと青春してるんでしょうかねえ(◍'౪`◍)♡

No title

PHiRo♪さん
コメントありがとうございます。

卒業式シーズンなので、青春ものです。
まだいけるかな。

過ぎ去りし青春の日々、甘い恋など欠片も無くて

 思い返せば悲恋の繰り返しでした。振られた記憶しか無いなぁ。
 いあ、一つあったわ。振られてないの。というか、もう笑うしかないエピソード。
 中学の卒業間際、後輩の女子から電話があった。ボタン下さい。よくある話。そう、よくある話なのよ。寒さも和らいでなんとなく浮かれた気分になる季節。出会いの別れが交差して何となくセンチメンタル。そんな一過性の流行感冒みたいなもんだとしか認識してなくて、後者の裏で第二ボタンあげて終わり。その日の夕方、電話がかかってきたけど、適当に流してお終い。考えてみれば精一杯勇気絞って告白してくれたんだと思うんだよねぇ。でも本人は全く不感症(笑。今だったら出来ないわ、勿体無くてorz
 ま、好きだった子に思いを伝えられなくてうじうじしてたって言うのもあるんだけどさ。
 村下孝蔵さんの初恋は私もブログで取り上げましたな。青春を物語る名曲ですな。

No title

miss.keyさん
コメントありがとうございます。

後で考えれば、惜しいことをしたなぁ、って話多いですよね。
片思いこそ青春なのかもしれません。

こんにちわ^^

あ、いい雰囲気ですね^^
二人で手に手を取って…そんな青春ってしたことなかったなァ(笑)

こんにちは~。

うん、うん、甘酸っぱい青春小説になってきた~(*^-^*)
明日が楽しみよ~^^

No title

切ない~!
キュンキュンですな!!
青春っていいな!

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No title

こんばんは~♪
私の青春なーんもないです(゚∀゚ ;)タラー
飛騨の進学校でスポーツまるでダメ高校、毎日補習授業ばかりでしたよ。
卒業式も出てませーん。
ああ灰色の人生だったわ(。_゜)〃ドテッ!

No title

sado joさん
コメントありがとうございます。

青春時代のキューンとする恋、素晴らしいですね。
あのトキメキ、今は皆無。
成人病の動悸かと思ってしまいます。

No title

冷凍SANMAさん
コメントありがとうございます。

懐かしい青春時代にタイムトリップできればと思っております。

No title

椿さん
コメントありがとうございます。

卒業シーズンですからね。
キュンキュンいきましょう!

No title

まり姫さん
コメントありがとうございます。

さすが教養高きブログの内容に合った、優秀な高校を卒業されたんですね。
ボクも含めて、大抵は卒業式は記憶に残っていないくらい、な〜んもないでしょうね。
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アルパカとバラとスプリング、つまり春(おまえはルー大柴か)を愛するナイスミドル?なサラリーマンです。でも同僚には、そんな趣味、ばらしません。キモイっていわれますから。残念!(古っ!)

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